ナルト好きブログ!(NARUTO考察・雑考)

NARUTO-ナルト-の考察(伏線、言葉、人物考察などなど!)続行中!

波の国編・ナルトと「再不斬と白」その2・・《敵側の心理描写》というNARUTO-ナルト-らしさの話

  

先日、ネット記事に(ジャンプ歴代作品で最高なものは?アンケート)というのがあって、NARUTOは堂々の第3位だった(1位は銀魂、2位はハイキュー!!)。 

 ま、限られた層による投票結果のような気はするけれど、それでも鬼滅やONE PIECEを抑えての3位ってのは、ファンとしては嬉しい。 

 で・・NARUTOがそういった「ジャンプ史に残る人気作」となったのも、連載早々に「波の国エピソード」でがっしりファンを掴んだからじゃないかと想像しております。

 

 波の国編で魅せた“バトルシーンの迫力と臨場感”、それと“主人公の圧倒的存在感”・・・それだけでも十分なのですが、そこに加えて もう1つ、成功の鍵ともなったのがNARUTOの個性」を読者にうまく受け入れてもらう工夫》です。 

 

 NARUTO-ナルト-という作品の個性」であり 主人公ナルトの個性でもある「ナルト流の闘い方」・・・つまり《敵はどうしてこうなったのかを知って 理解していく》という闘い方ですが、ナルトがこれを具体的に始めたのが「最初の敵であった再不斬と白」に対してでした。

 ただ、これは(前回記事で触れたように)少年誌としてはやや難しく、「すんなり受け入れてもらえるかどうかは やや賭け」的な要素でもあったらしいのです。 が・・そこは上手く段階を踏んで、途中で「美しく優しく聡明な白という敵キャラクター」を投入して風向きを大きく変えているし、何と言っても その前段である「ナルトVS再不斬の第一回戦」から仕込みがしっかり為されておる・・  そして、その仕込みこそNARUTO-ナルト-という作品の特徴でもある《繊細な心理描写》というわけです。

 

 敵である再不斬というキャラクターを「強そうで悪そうな奴」に描くのと同じぐらいに 彼の「心の弱さと迷い」をしっかりと描く。 そうすることで、読者も「再不斬というキャラをもっと知りたい」と心を動かされていく・・興味を持たせる、「知りたい願望を刺激する手法とでも言いましょうか。 

  では いかに再不斬の心理が描かれているのか、そのナルトVS再不斬 第一回戦を「再不斬目線」で追ってまいりましょう。

 

 さてさて、ナルトVS再不斬第一回戦は だいたいこんな感じだった。

 

《再不斬は「水牢の術」でカカシを拘束したところで「先にナルト達を片付ける」と言って、まずはナルトを蹴飛ばします。 しかしナルトは立ち上がって再不斬に向かっていき、そこで再不斬は再びナルトを蹴飛ばす。 カカシは逃げるようにナルト達に命令するが、それでもナルトはまた立ち上がり「火影を受け継ぐ」とか「木ノ葉流忍者うずまきナルト」と名乗る。 それで再不斬は「霧隠れに伝わる残酷な儀式」や自分が過去にしてきた残酷な行為について語り始める・・》

 

  

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「お前らくらいの歳の頃にゃもうこの手を血で紅く染めてんだよ・・」(第14話)

  さらに、幼い頃に 《自分よりも年上の忍者候補生の子供達を全員片付けてしまったこと》をサラッと語り、それを思い出しての この表情・・・

 

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「楽しかったなぁ・・アレは・・」(同じく第14話)

 

 いやぁ~・・怖いというかサイコパスっぽいというか。 奥の方で光る小さな目が これまた不気味でね; これにはナルト達も さすがにビクついて震え上がってましたっけ

 

・・・ですが。

 

 再不斬が「実際にした事」は何だったのか? といえば、 

 ナルト達を「片付ける」といったものの 、した事は「蹴飛ばし×2回」。

 再不斬だったら当時のナルト達なんて瞬殺のハズなのに、ただ追い払っただけなんです。

 それでも懲りずに向かってくるナルトに対して、 次にしたことは「言葉による脅し」。 威嚇しか してないんですよね。

 

 まぁ「素人同然の相手」に本気を出すまでもないし、まともに相手しないのが忍としてのプライドかもしれない。 だとしても、あんなに残忍な行為を「楽しかった」とか言うくせに 再不斬は「無益な殺生はしない人」だって事も分かるんです。

 

 再不斬はナルト達を「始末」しなかった。 いや、始末出来なかったんじゃないだろうか…? じゃあ、なぜ再不斬はナルト達を始末できなかったのか。

 

 まず最初の2発の蹴飛ばしは「単純に邪魔だったから」のような気はするんですが、それでも立ち上がってくるナルトを見たあたりから 再不斬の心が揺れ始めるんです。

 

 勝ち目がないと分かったら普通は逃げるし、そもそも上官のカカシが逃げろと命令してるのに、それでもナルトはまだ逃げない。  よろめきながらも立ち上がり、しかも真っ直ぐ再不斬の目を見てきた。 そんなナルトを再不斬はじーっと観察していましたが、ナルトが「いずれ木ノ葉の火影になる男・木ノ葉流忍者!うずまきナルトと名乗った時点で“察する”のです。 

《コイツは火影に憧れて、木ノ葉の忍であることを誇りにしている・・つまり、まだ現実を知らないだけなのだ》と。 

 

 嬉しそうに忍者を名乗って、額当てを締めて火影を目指すと吠えてはいるが・・ 火影なんて誰もが憧れるようなヒーローじゃあない。 それに里所属の忍である事は《国の為の戦う道具になる》って事なんだよと・・ だから「現実を教えてやりゃあ怖気付いて逃げ出すだろう」と再不斬なりに「答え」を出したのでしょう。 それであんな“脅し”をしてきた。 脅して、さらに今度はサスケに体術を使ってきた。いい加減に「懲りろ」とでも言うかのように・・・

 

 だけど、その後のナルトの反応は再不斬にとっては「意外」すぎるものだったんですね。 これだけ過酷な現実を教えてやっても、実力の差を見せつけてやっても、ナルトは全く怯まない。 それどころか さらにやる気満々になって「自信」さえ見せて「真っ直ぐ向かってきた」のだから・・ 

 これは「まさか」過ぎちゃって、今度は再不斬は「なぜ」に対する答えが出せなかったんですね。 残酷な現実を知っても なぜコイツは諦めないのか・・・再不斬は《何故だ?》と心の中で「答を出せない」ことに焦り始めたはず・・

 ま、再不斬はそれでも表面上は冷静で、「余裕」を装っていたんです。 だけど、ナルトの作戦にまんまと引っかかるという大失態を見せてしまう・・

 

 たしかにナルトの作戦は「裏をかく」作戦だったし、再不斬はナルト達を「ナメ過ぎていた」ってのもある。 だけど、再不斬ほどの忍がナルト達の作戦に はまってしまったのは「他の事が気になって集中できなかった」から・・・やっぱり心の中は冷静じゃあ なかったんですね。

 

 うーん・・経験値を積んだ“大人”ってのは「こうやったら絶対にこうなる」とか「こういう場合はこうすればよい」という“ノウハウ”を持ってるだけに、「どれにも該当しない例」を目の前に出されちゃうとパニックになったりする。 「まさか」にすぐに対応できるほどの柔軟さは、ベテランになればなるほど持ってませんからねぇ・・(頭硬くなっちゃってますから・・)

 

 だから、ここから先の再不斬は気の毒なほどにボロボロです。

 

 戦いに集中できなくなって、カカシの写輪眼にも圧倒されていく・・ こうして第一回戦は 再不斬の完敗です。

 

 思うに 再不斬が《何故だ?》と答えを出せなかった疑問は2つほどあって、一つは 「何故ナルトは諦めないのか?」という疑問、そしてもう一つは「ナルトを見て自分が何故こんなに動揺しちゃったのか」という疑問。 

 

 で、再不斬が「何故ナルトは諦めないのか?その理由を知りたい」と思ってしまうのは、おそらく本当は再不斬自身も「諦めたくはないのに、諦めてきたから」。 だからそれを貫ける理由を知りたいと願ってしまう。 そしてナルトを見て再不斬がこんなに動揺したのも、おそらく「本当はまだ諦めてはいないから」・・

 ナルトのまっすぐさは、再不斬がどこかで探していた・・あるいは「かつては大切にしていたモノ」だったんじゃないだろうか。 

 

 ナルトが「いずれ木ノ葉の火影になる男・木ノ葉流忍者!うずまきナルト」といった時、再不斬は おせっかいにも「忍世界の厳しい現実」を語って聞かせた。 それは戦意喪失させる為だけじゃなくて「黙ってみていられなくなったから」でもあるんじゃないのかな。  なぜなら・・「純粋に夢見ていた子供達が 現実を知って絶望したり、手を紅く染めて変わっていってしまった例」を おそらくたくさん見てきただろうから・・ もしかしたら、再不斬自身も「手を紅く染める前」までは そうだったのかもしれない。 

 

 こんなに真っ直ぐで純粋な「真っ白」な子も、いつかは紅い血に染められて薄汚れてしまう。 その現実を知っているだけに、ナルトの「あまりにも純粋で真っ直ぐなところ」を見て《黙って見ちゃいられなかった》んじゃないだろうか。

 

つまり、再不斬は本当のところは《真っ直ぐで純粋なものは汚したくはない》・・

 

 だから「片付ける」とは言っても「蹴飛ばして追い散らそう」としただけで、それでもダメならハッキリ現実を教えて《やめとけ》と忠告する。 真っ直ぐで純粋なナルトたちを「大人達の事情による争いに巻き込みたくはなかった」のかもしれない。本当・・はね。

 

 ただし もしそうだったとしても、 それは「再不斬が心の奥にしまい込んである想い」であって、まだこの時点で本人は「認めては」いない。 だって、これまで再不斬はずっと「戦う道具に徹することこそ忍」と言い聞かせて生きてきたのだから・・

  

 でも、ビンゴブックに載っている再不斬の罪状は《水影暗殺およびクーデター未遂》。 再不斬だって里の現状や忍の在り方に満足はしておらず、かつては自ら風を起こして変えたいと思っていたはず。  それに「オレは理想のために闘ってきた・・」とも語っていた。

 彼がクーデターを起こして「具体的に何をしたかったのか」は分からないし、彼が語るところの「理想」とは何かもはっきりとは分からない。 口では「理想のために闘ってきた」と言ってはいるが、数々の失敗を経て「理想と現実の狭間」で揺れながら 「諦めてかけていた」というのが実情なのだろうか。

 

  だから「不可能に対しても諦めずに まっすぐ向かってくるナルト」を見ちゃうと、まるで「かつての自分」を見てるみたいで余計に動揺したんじゃないのかなぁ・・  《いつかはお前も挫折すると分かるだけに 見ていられない》のか、《純粋で真っ直ぐなモノが傷ついたり汚れていくのを放っておけなかった》のか・・?

 

   かつての「理想や希望」、そして「大切にしてきたモノ」。 だけど失敗して諦めかけて、理想と現実のギャップに苦しみながら「現実を見て見ぬフリ」をして・・・・  世の中を渡っていくうえで覚た“諦めと見て見ぬフリ”だけ上手くなって、そのうち「大切だった守りたかったモノ」がだんだん見えなくなっていく・・ 

 だけどそんな時に突然、目の前に「諦めねぇ」って言ってるやつが現れた。 諦めろと忠告したくなるその一方で、《なぜ諦めずにいられるのか》と知りたくもなる・・

 

厳しい忍世界を生き抜いてきた屈強の男の、傷ついた「心」と「迷い」・・ それが第一回戦でうっすらと浮かび上がる。 

 

本人はそれを「隠せてる」つもりだけど、たぶん・・カカシにはバレてますよね。

  

  こうしてナルトの「真っ直ぐで純粋なところ」が、再不斬の心の封印を解いて 大切なモノを少しずつ思い出させていった・・・《相手の本心を浮き彫りにしていく》ナルトの「闘いのスタイル」がここから始まるのです。 

 

 そして このあと再不斬の「本心」は、白の登場や第二回戦でさらに鮮明になっていき・・・  第二回戦のラスト、ナルトが「お前は本当に何とも思ってねぇのか!?」と叫ぶ頃にはもう、読者もナルトと心を一緒にして 再不斬に訴えたくなるのです。 

 

 敵だけど・・だからって 「ただ倒せばいい」ってもんじゃない、敵なんだけど「放って置けない」。 再不斬の「本心を知りたい」と読者も思うようになる・・

 

だから・・・

 

ナルトが《ホントに・・ホントにお前は何とも思わねーのかよォ!!》と叫んだ次、ページをめくった先にあったこの絵で、

 

 

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小僧・・それ以上は・・・何も言うな・・・・

  

 読者も《一緒に涙を流したい気持ち》にさせられたら・・  NARUTO-ナルト-の「少年誌としては賭け」的な部分は 見事「成功」となるのです(32話)。

 

  ナルトVS再不斬の第一回戦といえば「カッコいい忍術戦と派手なアクション」という《動》に惹きつけられる。 だけど「再不斬の心の描写」という《静》部分も同じぐらい(あるいはそれ以上)惹きつけられる・・ 

 実績と自信に裏打ちされた“余裕を装う大人”である再不斬のほうが、“初心者でドタバタで ひよっこな少年”ナルトよりも動揺しまくっていく・・

「真っ直ぐで純粋な少年」を見た時、「大人」は何を想うのだろう・・?

 そこには、大人読者が「少年ジャンプ」を読み続けるのと共通する理由もあるような・・・・

 

 そしてこの後、登場人物の細やかな心理描写はNARUTO-ナルト-の作品としての「個性」であり「魅力」となっていきます。 少年誌としては「賭け」的要素でもあった“ナルトの闘いの流儀”は「敵側の繊細な心理描写を自然と描き込んでいく」ことで、押し付けがましくなく 「読者に受け入れられる」下地が作られていったのです。

 

 

☆長駄文、読んでくださって感謝。

 

☆次回は《再不斬と白が守りたかったもの》再不斬と白の関係について、特に「白」をメインに雑考していきます。 

 

 

 ☆ちなみに(余談)

波の国編においては、直接の敵じゃないけど「ガトー」という黒幕は登場し、彼は容赦なく再不斬によって成敗されております。 「悪い奴は成敗されるべき」という少年誌ならではのスカッと要素は、そこで一応消化されております。 ちょっと保険的な存在といった感じかな; 

 

☆ナルトの闘いの流儀、これは第1話のイルカ先生(親の仇の象徴であったナルト《いわば敵》の気持ちを想って涙する)に始まり、ナルトは再不斬と白のために涙を流し、我愛羅を想って涙を流したり、「師匠の仇」であるペインとの和解、そして「親の仇」であるオビトの過去に涙する事へとつながっていきます。 「親の仇」のために泣いたイルカ先生の涙は、ナルトの結末を予言していたとも言えましょうか。

ただ・・・これを貫いたナルトも、ラスボスであったカグヤについてはこの流儀を貫く余裕はなかった・・(これはこれで「次世代に託す」ということで物語のテーマに沿っているのですがね)。 

 

 

 

(ナルト好きブログ! 2021/05/14)