ナルト好きブログ!(NARUTO考察・雑考)

NARUTO-ナルト-の考察(伏線、言葉、人物考察などなど!)続行中!

「戦争と痛み」・・NARUTOと「戦争」

 さて、五か月ぶりの更新になってしまいました; まずえっと…昨年末には「ライブスペクタクル-ナルト- ~うずまきナルト物語~」の舞台を観てまいりました。 今回は コミックス44巻から52巻、自来也の訃報から鉄の国国境でのサスケとの再会まででして、自来也の最期から始まって(これはアニメの自来也声優・大塚芳忠さんのナレーション入りで泣けた)精神世界でのナルトとミナトの出会い、ペインの木ノ葉襲撃と仙術を身につけたナルトの闘い、ヒナタの「告白」からサクラちゃんの通称「嘘告白」シーン… さらにキラービーと雷影エーの絶牛雷犁熱刀(ダブルラリアットも豪快に炸裂し、涙あり戦いあり、熱い感動のNARUTO世界に浸らせていただきました。  ちょうど物語的にも このあたりは大きな分岐点、激動部分ですね。 いよいよ終盤の「戦争」へと向かっていくという…

 

 さて、今われわれの世界でも ウクライナとロシアの戦争について毎日報道されております。 ウクライナは地理的にも歴史的にも大国に挟まれ、侵略さたり支配されたりを繰り返してきたと聞きますが、正直なところ 平和な日本に暮らし 戦争を知らない自分たちが「戦争」「戦場になっている国の人々の痛み」を理解するのはとても難しい…   

 だけど、NARUTO読者なら ふと思い起こすものもあるんじゃないだろうか。 《大国に踏み荒らされた国の痛み》・・・雨隠れの里、長門たちの物語です。

 

 

NARUTO-ナルト-と「戦争」

 

 

  雨隠れの里は小さな国で、三大国に囲まれ戦争のたびに戦場化し「いつも泣いている国」だった。  長門の言葉が重い。 そして胸に突き刺さるんですよね・・

 

「平和ボケしたお前達火の国の民・・木ノ葉隠れに依頼する小さな依頼金が戦争の資金になる」

「火の国の民は少なからず戦争に加担した事実を知りつつ 偽善の平和を口にする」


「お前達大国の平和は オレ達小国の犠牲の上に危うく成り立っているだけだ」

「お前達の平和が我々への暴力なのだ」

 

 強烈な言葉なんですよね。 一応これは「敵」の言葉なんですが、返す言葉がうまく見つからない感じ・・ どっちが正義なのか分からなくなってくる。

 

 NARUTO-ナルト-って、全編通して かなり深く「戦争」に切り込んでいるんですよね。 第一部、カカシ外伝、第二部とそのすべてに「戦争」は出てくる。  第一部では序章的に取り上げられ、カカシ外伝はがっつり「戦争」が舞台で、第三部でNARUTOを総括するのが「戦争」という流れが出来ている・・ 「戦争について考える漫画」言えるぐらいに。

 

 

・第一部は まだ「大人たちの戦争」

 

まず第一部(1巻~27巻)ですが、ここで出てくるのは 大蛇丸による「木ノ葉崩し」。

 

 これは砂隠れと音隠れの里による木ノ葉隠れ襲撃で、カカシの言葉を借りれば「こりゃいわゆる戦争だ」。 短期決戦ではあったけど、これも他里との「戦争」だったんです。

 

 それよりも前になりますが、物語序盤、忍者になったばかりのナルト達に カカシ「慰霊碑の英雄」の話をするんですよね。 それを聞いたナルトは「それそれそれそれーっ!! それいーっ!オレもそこに名を刻むってことを今決めたーっ!」って興奮するんです。  無邪気にはしゃぐナルトに、カカシが「(ここに名を刻まれた英雄は)殉職した英雄たちだ」と伝えると、ナルトは戸惑ったように黙り込む…

 

f:id:papikonohanogenin:20220402165453j:plain

第8話より

 

 殉職と聞いて《はしゃぐような事じゃない》と感じつつも、正直この時のナルトには「良く分からなかった」感じ。  「戦争で国の為に散っていった忍の命の重み」を まだ実感していなかったんですよね。 

 そして「木ノ葉崩し」で、戦争っていうのは「こんな感じ」だと示されるんです。  戦争は平和な日常を破壊し、 突然 大切な人を奪っていく・・ってね。 

 

 だけど戦いが終わったあと、意外とナルトは「それほど大きな衝撃」は受けてない感じもある(このあとの「サスケの里抜け」のほうがナルト達にはずっと深刻な問題だったし)。 さすがに三代目の葬儀では「泣きじゃくる木ノ葉丸」を見て しんみりしてたけど、イルカ先生やカカシに「三代目もオレ達に大切なものを残してくれてる」と言われると「うん…!それも何となく分かるってばよ」と言って、「じゃっね!イルカ先生」と元気よく走り去っていく… 清々しいような表情でね。

 

f:id:papikonohanogenin:20220402172441j:plain

143話より。 このあとナルトもイルカも微笑んでいる‥

 

 ナルトに悲壮感はあまりない・・  里も一部壊され、犠牲者も出て 大人達はたいへんだったのですが、ナルト達若い世代の「笑顔」を見て イルカ達も勇気づけられたのでしょうね…。 大人達は、精いっぱい「子供達を守った」んです。 若い世代、子供たち・・「未来」をね。

 木ノ葉崩しでは 中心となって戦っていたのは父ちゃん達や先生、上官たちでした(ナルトと我愛羅の闘いは激闘だったけど)。 三代目も父ちゃん達も先生達も、里の未来である子ども達を守り抜いた…   ナルト達は、まだこの時は「守られる側」だったんです。

 

 木ノ葉崩しのラスト、カカシがカブトに「お前は結局見てるだけか」と聞くと、カブトは「今はね…」と答えています。 この「今はね」の意味は ずーっと先になって判明するのですが、この時は「大蛇丸ら大人たちによる大人達の戦争」だった・・という事なのだと思います。

 

 だけど、戦争は子供たちも巻き込み、犠牲とする事もある・・それが第二部との間に描かれた「カカシ外伝」で明らかになるんです。

 

 

・「カカシ外伝」は子供たちの戦争・・という とんでもない話(でもある)

 

 「カカシ外伝」(27巻)では、子供たちが戦争に巻き込まれている・・というより最前線で戦っているんですよね。 カカシ外伝の副題は《戦場のボーイズライフ》・・第三次忍界大戦中の 若き日のカカシとオビトの物語で、当時彼らは13歳ぐらい。 第一部のナルト達と同じぐらいの年齢なんです。 なのに、彼らは一人前の忍として 最前線に送り込まれ、大人相手に戦っている(しかも3人だけで敵地に潜入までしている)。

「友情努力勝利」の原則を守った感動エピソードでもあるけれど、子供が戦死して英雄扱いされた というかなり「とんでもない話」でもあるんですよね…

 

 忍者になったばかりのナルトは「慰霊碑の英雄」の話を聞いて、「それいーっ!」と憧れていたけど・・ その慰霊碑の英雄エピソードの「真実」がカカシ外伝でした。  

    

f:id:papikonohanogenin:20220402170302j:plain

第244話より

 

 これを「英雄誕生の感動エピソード」と捉えるのか、「戦争の悲惨なエピソード」と捉えるのか 読み方によって感じかたも変わってくる…  第二部開始に向けて、これでも「美談」で済ませますか?と問いかけたのがカカシ外伝だったのです。 

 

 さらにもう1つ、カカシ外伝では「草隠れの里が戦場になっている」という点。 

 

 草隠れの里も、雨隠れ同様に大国に囲まれた小国にあり、ここを火の国と土の国という軍事大国が戦場にしているんですよね。 当たり前のように大国が小国を踏み荒らしている・・これまたカカシ外伝が伝える「忍世界の現実」であり「戦争」の現実でした。  これらを伝えたうえで、第二部が始まるのです。

 

 

・第二部、いよいよ「ナルト達と第四次忍界大戦」

 


 そして第三部では、ついにナルト達が戦争に向かいます。

 

 第二部の終わりは55巻からラストまでずーっと戦争編で、とにかく長い…!長いんですよね…  それだけ「戦争」がNARUTOにおいて重要だったんだと今さらながらに気付きます。 

 

 第二部に出てくる話は、大切な人達の死、そこから生まれる憎しみ、そして憎しみが生み出す「次の戦い」・・・さらに「里がペインに襲撃され、壊滅的な被害を受ける」事態にも陥る。 そしてナルト達も、これまで小国が受けてきた「痛み」を知る事になる。

 

「火の国・・そして木ノ葉は大きくなりすぎた 国益を守るため大国同士の戦争で自国の利益を獲得する必要があった・・ でなければ国・・里の民が飢える」

「だがそれら大国の戦場になるのはオレ達の小さな国と里だった」


「その度に我々の国は荒らされ疲弊していった」
「幾たびかの戦争をへて大国は安定した 我ら小国に多くの痛みを残してな」

長門の言葉より)

 

うーーん・・ 重い、そしてドキッとする。 主人公側はいつも「すべて正義」なのが普通だから、ドキッとする。 だけど長門の言ってることはよく分かる。

自分たちの里と正義を守るために、他の国を平然と傷つけることもある ・・戦争とはそういうものだとナルトは知っていくんですね。

 

f:id:papikonohanogenin:20220402170854j:plain

第436話より

 

そして闘いのあと、長門はナルトにこう語ります。


《ゴミのような死と・・ 永久に続く憎しみと・・癒えない痛み・・それが戦争だ》

《ナルト・・お前がこれから立ち向かう事になってくるものだ》

 

 長門から重たい課題を託され、さらには父・四代目火影からも「答は自分で探すんだ」「お前ならその答を見つけられる」と言われて、ナルトは戦争に立ち向かうことになります。 いや、簡単に託されちゃったけど、コレとんでもなく重いでしょ・・重たすぎるほど重いでしょ・・それに難しすぎるでしょ;

 

  敵との戦いは、力による戦いだけじゃなくて、長い長い「論戦」にもなった…    

 

f:id:papikonohanogenin:20220402171645j:plain

第628話より、ナルトとオビトの「論争」が続く…

 

 

 

 これ、本当に長かった・・ オビトとの論争、言い争い部分は相当長いです。でもそれだけ重要なんです。読み応えはある。

 それに 歴代火影など過去の忍達まで登場して、昔の戦はどうだったのか、彼らが戦争についてどう考えていたのかも描かれていきます。 そして戦争の一番の犠牲者は子供達だった」ことも描かれていく・・ 

 

 子ども達が最前線に駆り出されたり、スパイとして過酷な任務に就いたり…   親をころされてしまったり、騙されて大人に利用されてしまったり。それはもう過酷だった。

 そんな中で、大人達は「子供を守りたい」「弟達を守りたい」と色々考えてはきたけれど、結局そんな世界を変えられずにきたと…    

 

f:id:papikonohanogenin:20220402172125j:plain

622話より。 二代目火影扉間は冷静な子供だった…

 

  いろんな人と出会って、それぞれの立場からの考えを聞いて、何があってこうなったのかを知って・・ナルト達は せいいっぱいの「戦いを止めるための答え」を自分たちで見つけていく・・「自分たちで考えていく」んです。 

 

  

 にしても、「戦争」という難しいテーマにここまで踏み込むなんて、今さらながら よくこれを少年ジャンプでやったよなぁ…と思います。 とてつもなく“めんどくせぇ”お題に、真っ正面から取り組んだよなぁと思う…     あの戦争編の長さは賛否両論あると思うけど、こうしてみれば アレは「編集部による引き伸ばし作戦だっただけじゃなく、最初から練り込まれていた重要テーマだったから…なのだろうと思えてきます。 第一部の木ノ葉崩しも、カカシ外伝も、第二部の各エピソードも、ナルトの歩いてきた道も…すべて「戦争」で総括されるわけだから。 

 

 でも、今がこういう状況だからというのもあるけど、いつ何時 我々だって戦争や紛争に巻き込まれるか分からないし、けして「他人事」ではない。 

今だからこそNARUTOの「戦争」について色々考えながら読んでみるのもいいんじゃないか・・ けして軽々しく語れないし 難しくて厳しい問題なんだけどね…。

作者は、どんな想いで描いていたのだろう。

 

 「戦争」についての答えや考えは、きっといろいろあると思うけど… サスケは「全てを知り自分で考え答えを出し 己の意志と眼で成すべきことを見据えたい」と言っていた・・ そして自来也は、「成長するとは どうするか自分で考えることだ」と言っていた。 

 

 

f:id:papikonohanogenin:20220402200948j:plain

「成長するってどういうこと?」と長門に聞かれた自来也は・・

 

 NARUTO-ナルト-は、問題提起しながら「自分で考えて欲しい」と語りかけているんじゃないだろうか。 これから先、どんなことがあるか分からないから・・けして他人事で済ませることなく、「考えて」ほしいと。

 

 

 

☆長駄文、読んでくださって感謝。

 

☆2022年秋、ライブスペクタクル-ナルト-の新作公演が決定しているようです。いよいよ戦争編ですね・・!

 

 

 

 

 

(ナルト好きブログ! 2022/04/02)