もう1つの愛の物語 (ふたりの兄さん)
先週今週と、オデコで愛を確かめ合った人達がありましたが… ナルトも綱手にキス(おまじない)してもらった事ありましたよね。 我愛羅とは頭突きした仲だし、あれで我愛羅とナルトは理解し合ったようなものでしたね・・。
だから、ナルトがトビに“頭突き”を噛まして挑戦状を叩きつけた時は《この2人も分かり合えるな、きっと》なんて楽観してしまった次第です。 ナルトにとっちゃ頭突きは《お前の心の仮面を引っぺがすぞ》宣言ですから。
で、ナルトの場合は、モノを受け取る場合は「オデコ」よりも「口」のほうが多いんですよね、ようするに《食べる》。
ガマ寅(九喇嘛の封印の鍵)も口で受け取ったし(つまり食べた)、イタチのカラス(シスイの眼)も“食べた”。ナルトのお腹ン中には国宝級のお宝がシッカリ入ってたんですね、鬼鮫の言葉を借りるなら《こんなお子さんにねェ・・》。
ま、とにかくナルトと言えば《食べる》。 ラーメン食べてるシーンの多さと言ったら相当な数だし、元気が無くても落ち込んだり過呼吸になっても、寝たり食べれば元気になることも多い。
…そして、それは綱手も同じ。
ペイン戦でこん睡状態になった綱手ですが、結局爆睡したあと爆食して回復した…
…千手系・うずまき系は「わかりやすい」。
ミミズラーメンまで食べちゃった事があるナルトですが、中でも「え?」と思ったのは、57巻…島亀の結界から飛び出しちゃって戦場に赴く時、『イルカ先生から貰った手紙まで食べちゃったこと』。 ヤギかぃ・・・。
で…やっと本題、その「ナルトがイルカ先生から貰った手紙を食べちゃった」時の話についてなんですが。
《もう1つの愛の物語》ってキモチ悪いタイトル付けてるんですが、何のこっちゃと言いますと、1つはサスケに愛を遺して逝ったイタチの愛情の物語のことでして、「もう1つの愛の物語」とはナルトに愛情を渡したイルカの物語のことです。 イタチとイルカ・・・二人とも「弟たち」に愛を渡して戦場に送り出した兄さん達。 二人ともイニシャルが“ I (愛)”なので(ItachiとIrukaの“I”); 二つの愛ってことで、ひっかけました(くだらなくてすみません)。
《イタチとサスケの再会物語》は、クシナとナルトの再会にそっくりだったわけですが もう1つ…「イルカとナルトの再会物語」とも似ていたんです。 つまり、57巻535~536話、ナルトを島亀から出さない見張り役の「切り札」として登場した時のイルカと、ナルト。
あの時、イルカは綱手から重要任務「ナルトの足止め」を直々に言い渡されてたんですよね。で、散々説得したんですが、ナルトは力でイルカを振り切ってしまった。 イルカ“渾身”の結界のことを、ナルトってば「こんな結界じゃあ~」なんて言い方して振り切って。
ナルトは「先生…オレってば強くなったって言ったろ」なんて言ってたから、いつまで経っても子供扱いしてくるイルカに かなり前から不満が募ってた感じなんですよね。 それまでナルトなりの気遣いで、ナルトはイルカの《子供扱い》に付き合ってたんじゃないかと思うんです、先生を喜ばそうとして、先生を立てようとして・・ それもナルトの感謝表現だったと思うんです。 だけど、ついにここで不満が噴出したのではないかと・・;
いつまでもアカデミーの頃のオレじゃないってばよ!みたいな・・。
で、イルカのほうは・・
危険だと分かってる戦地にナルトを送り出すなんてのは、イルカには「絶対イヤ」だったと思うんです。そもそもイルカって、ナルトに対しては基本的に「過保護」と言えるぐらいの心配性。 イヤ・・悪い意味じゃなくて母さん的だなぁと思っていたんです(本人は「兄さん」と言ってますがね)。 家族を失っているイルカだからこそ《もう二度と失いたくない》という気持ちは強いだろうし、大切な者を失うトラウマもあって、ナルトを危険から守りたいという気持ちがど~しても優先してしまうのかな・・と思うのです。
第1巻では、体を張ってナルトを守ったイルカ。だけど、イルカがナルトの「盾となって」守ってやれたのは、あの時までなんですよね。
まだナルトが下忍になって間もない頃、カカシがナルトの事を「実力はバリバリに伸びてますよ・・尊敬するアナタ(イルカ)に追いつくぐらいに・・!」なんて、ちょっと皮肉?と思えるような言い方してたことがありますが・・その時のイルカはまだ無邪気に喜んでたんですよね。
でもそのあと、ナルトはどんどん強くなっていき、危険にも巻き込まれていく…
もちろん、イルカはナルトの強さも自分の弱さもよーく分かってたし、自分じゃナルトを守れない事もよーく分かってた。 それでもしばらくの間、イルカは一生懸命「先生面」とか「兄貴面」してたんですよね、 「お前なんかまだまだだよ」なんて言いながら。 そうでもしないと、ナルトとの大切な関係(絆)が消えて無くなっちゃいそうに思ったんじゃないだろうか・・・ナルトを失うことが怖かったんじゃないだろうか。
段々と自分の言葉に説得力が無くなってる事に気づきながらも、必死に「ちょっとだけ偉そうな態度」を取ってみる。 そして「ラーメンおごってやること」で、何とか「ナルトの先生」「ナルトの兄貴」としての体面を保とうと 必死だったようにも見えた・・。でも、いつかはごまかせなくなる時が来る。ナルトが「弱い自分」から離れていっちゃうことを、イルカはずーっと恐れていたような気がします。
イルカが《もう自分ではナルトを守れない》と思い知らされたのが、ペイン襲撃の時じゃないかと思うんです。
イルカにとって初めて見る「暁」の脅威、これほどの者達がナルトを狙ってくる… ナルトが置かれた厳しすぎる現実を思い知り、イルカは自分の無力さを痛感したんじゃないだろうかと・・。
ペイン天道をカカシに任せ、負傷者を連れて退く時・・イルカが祈るように言った《お願いします、カカシさん・・・》。 お願いします、どうか絶対にナルトを守ってやってください・・と言いたかったんだろうなぁ。
出来るなら自分で戦ってナルトを守りたかっただろうけれど、いつも誰かに「お願いします」と頭を下げることしかできない自分への苛立ちを、イルカは感じていたんじゃないだろうか・・。
57巻の島亀任務でも結局ナルトを止められなくって・・ナルトを見送りながらイルカが思っていたのは
《ごめんなぁナルト… オレは弱い…兄貴面してもいつもお前を守ってやれなかった》。
だけどビーは言うんですよね、
「アンタの言葉が今までナルトを守ってきた強力♪」と。
そしてイルカはやっと、自分が「力ではなく言葉で」ナルトを守ってきた事を知り・・やっと自分を許せてやれたんんですよね。自分にできることもあるって。 兄貴として「完璧」じゃない自分を、やっと認められたというのかな・・。
ナルトを託したビーを見送った時の《最敬礼》は、いつもみたいな自己嫌悪に陥りながらの「お願いします」ではなかったような気がします。安心して任せられたんじゃないかな、イタチがナルトを信じて任せたように・・自分が出来ない事を仲間に託して。
綱手に任務を言い渡された後、イルカは《自分にナルトを守れるか》考えてたんですよね。
もう力でナルトを抑えることはできない・・・先生としてナルトを抑えられない。今まで《避けてきた現実》と、ついに向き合うべき時が来てたんですね・・イルカにも。
そしてイルカが出した結論は、ナルトを信じて送り出すしかないという事…その為には、ちゃんと伝えておかなくちゃいけない言葉があるっていう事・・。
そしてイルカは、ナルトに直接大切な事を言えたんですよね、
「オレにとってお前は・・ 弟のようにも思ってる」と。
真面目なイルカは、今まで「ナルトだけを特別扱いしてはいかん!」なんて先生のプロ意識が働いて、ホントはナルトが特別だってことは伝えられないでいましたよね(態度には出てましたが)。でも、その禁断の愛(大袈裟)をようやく素直に伝えられた事、素直に兄貴としての愛情をナルトに伝えられた事で、《尊敬してもらえないとダメ》という立場から自分を解放してやれたんじゃないだろうか。
上からの目線で頑張るのではなく、これからは兄貴としてごく、自然に接していけばいいんだ・・と。
手紙で伝えたのは、先生としての小言ではない「生きて帰ってきてこい」という兄貴としての愛情…これでイルカもナルトとの新しい関係に踏み出せたんじゃないかな・・という気がします。
…とはいえ、ナルトはイルカの思い通りには行動しなかったんですよね。イルカが望んだのとは違う道を、ナルトは選択した。だけど、イルカは弟をそのまま送り出してやった。
イタチ兄さんもイルカ兄さんも、出来るなら傍にいて自分で守ってやりたいのでしょう・・・。だけど、それぞれの理由でそれは叶わない。今迄は「何とかして」自分で守らなくちゃと思い込んでいた二人も、弟を仲間に任せ、弟の『巣立ち』を見送ってやる事が出来た・・・
そのかわり、ちゃんと《これだけは言っておきたい、大切な愛情の言葉》を与えて。
こうやって「完璧であろうとした」兄さんズは、ようやく自分を許してやれたんだろうか。やっと、彼らも弟離れが出来たのかな。兄さんってのも、大変だな・・・。
…我が道をゆく弟ども。一人は愛をオデコで受け取り…
そして、もう一人は愛を食べて(笑
☆長駄文読んでくださって感謝。