我愛羅が見守る《ナルトとサスケ》の先
「ふ…フツーならここで握手とかして別れんだろーけど… オレってばそーゆーの苦手だからな! このまま…」と顔を赤らめたナルトに、スッと手を差し出した我愛羅…
でも、ナルトはその手を取るのに躊躇した(…32巻281話「サスケへの道」)。
約3年の修業を終えて帰郷したナルトは、我愛羅はもう風影になったと聞き、嬉しい反面ちょっと悔しがった。 しかし我愛羅が“暁”に連れ去られた時、ナルトはそんな悔しさは忘れて無我夢中で我愛羅を助けようと追いかけて… そして我愛羅が目を覚ました時(これが事実上「3年ぶりの再会」)、ナルトは2人の間にある「差がつき過ぎた現実」を目の当たりにすることになる。
…ナルトにとっちゃ“羨ましすぎる光景”だったに違いない。
だからなのかな…任務を終えて砂隠れを発つ時、ナルトはいつものナルトらしくなかった。あれこれ言い訳して「握手しないでおこう」としたのは、はじめは照れだと思ったんですがね…でもどうなんだろ、あの時ナルトは我愛羅との“すっげー差”を感じてて、気後れしてたんじゃないだろうか。
他の人には分からない「ナルトだからこその」気後れ…《同じ人柱力なのに》これほどまでについてしまった「差」。 単純に「影と下忍」という階級差だけではなく、里の「全員」に認められた我愛羅と、まだまだ皆に認められていない自分との「差」に対する気後れ。
とても「今の我愛羅」と「今の自分」が互角に握手なんて出来やしない…ナルトは、あの時ホントはそんな事を考えてたんじゃないだろうか。
でも、我愛羅はナルトのそういった複雑な胸中を「分かってた」のかもしれない。 躊躇するナルトの手を、「直接」ではなく「間接的に」砂で取って、そして握手「させた」。 あの握手は《いつかお前もきっと…》という我愛羅の無言の応援だったのかな…
でも「出会ったばかりの頃のナルト」は、こんなじゃあなかった。
孤独の闇に居た我愛羅に手を差し伸べたのはナルトのほうだったし、あの頃のナルトには迷いがなく、ひたすら真っ直ぐでがむしゃらだった。 あの頃は、ナルトにとって一番充実した「いい時」だったんじゃないのかな… サスケとのつながりも実感し始めていたし(サスケに「お前とも闘いたい」と言われたり)、周囲からも認められつつあって…全てが概ね順調だったから。
しかしその3年後、立場は“逆転”する。
「お前はオレと同じ目をしている」「本当の孤独を知る目…」
…かつて我愛羅は、サスケにそう言っていましたっけ。
自ら周囲との繋がりを断ち、孤独に身を置く…昔の我愛羅は、里では「厄介な兵器」扱い。 繋がりと愛を求める一人の人間としての己を否定され、本当の自分を封印し、周囲が「望むような」恐れられる兵器として生きていた。サスケも本来の「繋がりと愛を求める己」を封じ込め、求められた「復讐者」として生きようとしていた…
あの時、我愛羅は「かつての自分」をサスケに見たのか、それとも…
「今もまだ光を受け入れられない自分」をサスケの中に見たのだろうか。
すっかり全てを克服したかのように見えた「風影・我愛羅」も、まだ自分がこっそりと心の奥に「埋められないもの(両親の愛情)」を抱え、完全には光を受け入れられないでいることに気づいたのかもしれない。
そしてその直後、鉄の国で会ったナルトは、我愛羅が今まで見たことがないほど憔悴し元気がなかった… 「ついこの間」里を“暁”から守った英雄、里の皆に認められた英雄とは思えないほど落ち込んだナルト。
いくら里の人々に認められようが、ナルトには「まだ」埋められない大きな穴がある…その「サスケ」という穴がナルトにとってどれほど大きな存在か…我愛羅にはナルトの想いも分かったんじゃないだろうか。
《いまだに本当の自分を受け入れられないサスケ》も、《いまだに抜け落ちた穴を埋められずにいるナルト》も、我愛羅にはどちらも「自分自身」のように見えていたんじゃないだろうか。 どちらも「自分」と似ている、サスケとナルトのことを…我愛羅はどんな想いで見つめていたのだろう。
でも、我愛羅はこの戦争で「父さま」に再会し、今までこっそり抱えていた「穴」を愛情で埋めることが出来た… その後の我愛羅は、心の持ち方もきっと変わったと思うんですよね(我愛羅ってあんまり表面上の態度を変えない人だから、あまり変化は分からないんだけど)。
今まで「ナルトとサスケ」を見守り続け、そして心の穴を埋めたばかりの我愛羅だからこそ、今回(673話)のナルトのどこか吹っ切れたような「迷いがなさそうな」表情に、何かがあったことを感じたかもしれない。 もちろん「具体的に何があったのか」は分からないにしても。
「お前が火影になったら」一緒に杯をかわそう…と我愛羅が言ったのは、ナルトが「生きててくれて嬉しい」のもあるだろうけど、ナルトが「火影になる自分」をシッカリとイメージ出来るようになってきてる…って事に気づいたからでもあったのかな…?
かつては、我愛羅と「風影と将来の火影として」互角に握手することに躊躇したり、我愛羅が激励の意をこめて「影の名を背負う先輩として」肩にそっと置いた手を、ちょっと拒むように下ろさせたナルトが…(これは51巻)、今度は、我愛羅の言葉に、
「……」
「オウ!」
と《応えた》・・・
《風影として、将来の火影に差し出した手》に、やっと応えたナルト。
我愛羅は確信したんじゃないだろうか…ナルトがこっそりと抱えてきた「埋められないでいたモノ」が、どうやら“埋められつつある”ことを。
ずっとナルトとサスケの2人に心を寄り添わせてきた《我愛羅だからこそ》…
☆駄文、読んでくださって感謝。
(ナルト好きブログ! 2014/04/23)