四代目風影(我愛羅父)と親子のありかたについて
今回は、今週の感想で駆け足で飛ばしてしまった「歴代五影」と、今週のテーマでもある「親子関係」、その2つに絡んだ話題として…『四代目風影(我愛羅父さま)』のことを少々…
正直言って「四代目風影(我愛羅父さま)」のイメージは、あまりパッとしないというか…風影としても父としても(そして夫としても)中途半端なイメージを持っていたんです。でも、58巻の彼の回想を見ていると、彼は「風影」として毅然として息子と向き合ってきたつもりだったのか…あるいは「そうせざるをえなかった」のか… 彼はおそらくブレない「立派な風影」だったのでしょうが、でもあの回想からは「揺れる」姿も見えてきます。
回想に出てくる、我愛羅が生まれた時…加瑠羅の出産の場面。
四代目は、生まれたばかりの我愛羅を見て「小さいな…未熟児か これで本当に大丈夫なのか?」とチヨと話してるんですが、苦しそうに喘ぐ加瑠羅から少し離れた場所に立ってるんですね。 なんだか…加瑠羅の容体よりも、我愛羅が「人柱力として適応できるか」のほうが気になっているようにも見える。
加瑠羅の「赤ちゃんの顔を見せて…」の声で、ようやく四代目も「夫/父」としての顔に戻り加瑠羅の側に行きますが、それまでは「子供が生まれて喜ぶ父」ではなくて、あくまで「風影」。側に、口うるさそうな上役・チヨがついていたせいもあるのかな…。
その点、クシナの出産では「火影」としての立場以上に「夫」であり「父」であったミナトとは対照的と言いますか… ミナトは「火影」と「父、夫」としての両面を柔軟に使い分けてた感じがするけど、我愛羅父さまは常に「風影」としての立場優先で、常に「影」であったような印象があります。
加瑠羅が息切れしながら「見せて」と言うまで、誰も赤ちゃんを加瑠羅に見せようとしなかったのか…まずは生まれた赤ちゃんを母親に見せてあげるべきだと思うのに… まるで加瑠羅は「人柱力を生む機械」のような扱いで…なんだか気の毒に思ったんです。
加瑠羅の「なんて小さい子…」という言葉が、親としての愛情に溢れる慈しみの言葉であるのに対し、「小さいな…大丈夫なのか?」という四代目の言葉は「人柱力の器として使い物になるのか?」という見極めの言葉…
我が子の誕生に際しても「父/夫」としてではなく「風影」として振る舞う事を里(上役)から要求され、それに忠実に従っていた…その結果のこの態度だったのでしょうか。
しかし、その直後に加瑠羅が命を落とすことになり…四代目風影の「我が子我愛羅」への愛情は、さらに複雑なものになっていったように思います。
加瑠羅が命と引き換えに産んだ「我愛羅」をどう受け止めていいのか…彼は迷っていたのでしょうか。
我愛羅を一人前の人柱力として育てる事が、風影としての義務であり、そして加瑠羅への償いにもなると思ったのかもしれませんが、彼が我愛羅に施したことは「忍の極意」を教える事と「物を与える」事…いわば「形」だけの教育と養育でした。肝心な「我愛羅の心と向き合うこと」は「夜叉丸」に託してしまう…
「託す」というよりも、夜叉丸に我愛羅を「押し付けてしまった」と言っていいかもしれません。
風影としての公務が忙しかったせいもあるでしょうが、四代目は我愛羅と直接向き合う事を避けていたんじゃないだろうか。 我愛羅と正面から向き合う事…それは「加瑠羅の命を奪ってしまった」事実と向き合う事でもあったと思うんですが、彼はそれを「避けて」いたような気がする…
夜叉丸に我愛羅の教育係を任せたのは、母の面影を持つ夜叉丸を側に置くことで、「母を失った我愛羅」への償いをし、さらに「姉を失った夜叉丸」にも我愛羅を与える事で償いをするつもりだったのかもしれない。たしかに、それも適切な判断だったと思えるのですが…
その結果、我愛羅は…夜叉丸のもとで純粋な「母様を慕う気持ち」を育てていく…
そのような繋がりは、「四代目風影と我愛羅」の間には無いものでした。
四代目は、我愛羅と自分の間で共有するのは「加瑠羅を失った痛み」であるべきだと考えていたんじゃないでしょうか。 四代目は一生、加瑠羅を犠牲にしてしまった痛みを背負いながら「影として、長として」責務を果たす覚悟だったのだろうし、我愛羅にも同じように「人柱力として」母への償いをする事を望んだのではないかと思うんです。 我愛羅が持つべきものは「母への愛情」ではなく、「母への贖罪意識」であるべきだと…
でも、夜叉丸が我愛羅に行ったことは《器に母の愛情を入れる事》でした。
四代目にとって夜叉丸は、優秀で忠実な「右腕」でもあり良き理解者でもあったと思うのですが、同時に「余計な事をする存在」でもあったんじゃないか…なんて思ってしまう。
《我愛羅と夜叉丸が加瑠羅の話をしている時間》…二人が加瑠羅の「愛」で心の傷を癒す時間…
本当は、四代目も同じように加瑠羅の愛で《心の痛みを癒したい》想いを持ってたと思うんですよね… 心の中にそっと…そういう想いも秘めていたんじゃないかと思うんです。 たまには「父」として「夫」としての自分に戻りたいと願う事もあっただろうに…
だけど、彼はそのような感情は「甘え」と考えて否定していたんじゃないだろうか。大切なモノを失っても自分をコントロール出来ないようでは「影」は務まらないと考え、加瑠羅の思い出や愛を「封じ」…同じことを我愛羅にも望んだのではないだろうか。
風影にとって「夜叉丸」という存在は、優秀な右腕であるだけではなく、妻・加瑠羅を思い起こさせる愛しい「義弟」でもあり、加瑠羅を失なった悲しみを共有できる唯一の理解者だったと思うのですが…
そういう結果になる事を当たり前のように予想していたみたいでした。
あの一件…あれは我愛羅を「試す」だけではなく、夜叉丸も「始末」する事も計画のうちだったのではないか…
四代目風影にとって「夜叉丸を始末する事」とは、我愛羅と己の「愛情に逃げようとする甘さ、弱さ」を始末する事でもあったんじゃないだろうか。夜叉丸も、風影の想いを全て分かったうえで覚悟をしていたんじゃないかと思いますが…
「夜叉丸も忍…」と四代目は言っていましたが、風影自身も「忍」だったという事なんだろうか…
「風影」として大勢の上役達に成果を出すことを期待され、若かった四代目は「里の為に」必死に働き…子作りでさえ「里の為」…そのために妻の命さえ犠牲にし…「愛」を犠牲にして里に捧げた彼は、唯一の「心の友」とも言える夜叉丸さえ、里の為に「消して」しまった…。
穢土転された風影は、我愛羅に「お前に友ができたというのか?」なんて発言をして、二代目ちょび影に「おいおいどんだけ寂しいガキだったんだよ」と突っ込まれていましたが、「友が居なかった」のは風影自身もそうだったんじゃないだろうか…?
「過保護」という形で愛情の埋め合わせを計り、心の強さを願って息子から愛情や友を奪って孤独の道を進ませ、直接息子と向き合う事を避け… 「心の内」を息子に語る事もなく、最後まで「影」としての姿勢を貫き、「親子の関係」ではなく「風影と人柱力」であろうとした四代目風影。
愛情が無かったわけではなく、里の為、上役からの期待に応える為、加瑠羅の犠牲を償う為…己の愛情も封じてしまった、極めて「真面目」な性格が 彼を追い込んでしまったのでしょうか。
いつも険しい表情で腕組みし、上役との会議の場では「ハァー」と深くため息をつき… 生きている間、彼は「普通の父」としての顔を見せることは許されなかった…己に許さなかったのかもしれない。
穢土転されてから、彼は「親ってのはただ…子供を信じてやればいい…たったそれだけ」と悟ったように呟いていましたが、「たったそれだけ」…これがいたってシンプルなようで、めちゃくちゃ難しい事なんでしょうね(きっと)。
NARUTOの中には、例えば奈良シカクのような「親父の背中見て育ったからよ」なんて息子に言ってもらえる父ちゃんもおりますが(ま、シカクさんも色々と「弱み」はありますけど)、立派な忍であっても「父さんとしては今一つ」な方も結構いらっしゃいます。
あの優秀だったサクモだって「ヘタレ父さん」な一面もあったし、カカシと分かり合ったのは死後の事でしたし… 三代目とアスマの間にだって「かなり」色々とあった様子…「里の父」として立派だったヒルゼンでさえ「アスマの父」としては失敗も多かったらしく、生前には息子と分かり合えなかった…
NARUTOに登場する「大人たち」ってのは、結構いろいろと道に迷う。
強くて“かっけー”忍達…一流の成熟した忍達の大半が、いや殆どが、人間としての弱さを見せて「迷う姿」を曝け出してます。 世間では「一人前の忍」で通っているのに、心の中では「自分は失敗ばかり」なんて思ってる…
でも、そんな「いい歳した大人達」が、ナルト達の“先(未来)”を真っ直ぐ信じている姿を見て、もう一度《生きる力》を取り戻していく…(我愛羅父さまは死んでるけど)。
NARUTOの物語は、これからの世代へのエールだと思うけれど、迷える大人達への励ましでもあります。だから…いい歳したオトナ(のはずの)自分でも、思わず共感してしまうし、惹かれてしまうんだと思います(もう、とっくに「ターゲット世代」は超えまくってるんだけどな…)。
「真面目すぎるほど真面目」だった四代目風影は、「長」とはいえ、まるで会社に忠実に尽くした企業戦士のよう… 本来なら「我愛羅の夢」のように「家族団らんの時間が欲しかった」父さんだったのかもしれないのに…たまにはだらしない姿を晒して可愛い妻に甘える夫だったかもしれないのに……そのあまりにも不器用すぎる融通が利かない生き方も、なぜか憎めないというか…親近感を感じてしまうのです。
☆駄文読んでくださった方、ありがとうございます(感謝
☆アニメ(9/4)観ました。良かった…
ナルト好きブログ! 2014/09/04