ナルト好きブログ!(NARUTO考察・雑考)

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カンクロウの「長男」の生き方

カンクロウの「長男」の生き方

「転んでもただじゃおきない… さすが砂の忍」 
(29巻、カカシ)
 
 一人で“暁”を深追いして失敗したものの、“暁の衣”の切れ端を傀儡「烏」に握らせて情報を逃さなかった…  「熱くなりすぎる」一面と、「冷静」な策略家としての一面を持つカンクロウ。 もっとも、彼が熱くなりすぎるのは「弟を守ろうとする時」なんだけど…
 
 《弟に全てを背負わせてしまった「後ろめたさ」を感じ、何が何でも「自分が」弟を守ろうとした兄》…そして《完璧ではない自分を許し、他者に弟を託す事を知っていく兄》の物語…というと、まずは『イタチ』の事を思い浮かべるのですが、これ、カンクロウの話でもあるのです。
 61~62巻で穢土転イタチがその事に気づいていくよりも前に… 28~31巻で、カンクロウが同じような道を辿っているんですね。 第二部冒頭の『風影奪還任務』…あの物語は、カンクロウが《傀儡師として》そして《兄として》成長していく物語でもありました。
 
 カンクロウは、三人兄弟の二番目にして「長男」…
 
 中忍試験の頃のカンクロウは、家庭内でも里内でも、ちょいと難しい立ち位置にいた…(と思う)。 「風影の長男」ではあるけれど、上にはシッカリ者のテマリ姉さんがいたし、下には守鶴の人柱力・我愛羅がいて… そして父・風影は我愛羅の「取り扱い」に神経を尖らせてばかり。 カンクロウも、我愛羅のことは腫れ物に触れるようにして接し、ちゃんと向き合う事が出来てなかった…  我愛羅の「言動の暴走」を止められず、救ってやることもできず、ただ恐れるだけ…。 
 
 だけどカンクロウだって、もしかしたら「守鶴」の人柱力になっていたかもしれないんですよね。 《守鶴に共鳴しなかった》というだけで その任を免れ…一方で我愛羅は《守鶴に共鳴した》という理由だけで人柱力になってしまった。 弟に「人柱力」という重荷を背負わせてしまったのに、何もしてやれない後ろめたさと…守鶴への恐怖から、我愛羅とちゃんと向き合えずにいたんじゃないかと思います。 
 
で、当時の我愛羅は、こんな事までカンクロウに言っている…
  
《愚図》とか《腰抜け》とか…
 
 カンクロウはその度《ピク》とか《ピキィ》と反応してるのですが、ほとんど何も言い返せないんです。 痛いところを突かれたというか、きっと「当たってた」からなんですよね。 忍として《愚図》とか《腰抜け》というよりも、兄貴として《愚図》とか《腰抜け》だと…カンクロウ自身もそう感じていたんじゃないだろうか。 「たまには兄貴の言うことも聞いたらどーなんだ」なんて言ってはみたものの、そのセリフも、ただ虚しく響くだけだった…。
 
 でも、木ノ葉崩しが終わって里への帰還中…カンクロウに1つの転機が訪れます。我愛羅が言った「済まない」の一言に、カンクロウとテマリは顔を見合わせて驚く… 我愛羅の口から「他者を想う言葉」が出るとはね…  さらに、我愛羅の「風影になる決意」「他者と繋がりたい想い」を聞いたカンクロウは、《兄貴として》我愛羅の意志を応援し、全力で弟を守る事を決意をする。
 
 そしてもう1つ、カンクロウにとって大きな転機となったのが、サソリとの戦い、そして《完敗》…

我愛羅を連れ去った“暁”を一人で追って、《烏、山椒魚、黒蟻》の三機を出したカンクロウは、“赤砂のサソリ”に「完敗」してしまう。 だけど、あの敗北がカンクロウにとって「傀儡師」としても「兄」としても、大きな成長のきっかけとなったんですね。《転んでもただじゃおきない》とは、まさにこういう事…。
 
 あの完敗の「直接の原因」は、三機の作者がサソリだったこと…人形の「作者」は「操演者」以上に人形の仕込みを知っており、『操演者は作者を超えられない』から…でした。 しかし、それ以上の原因…それはカンクロウが「作者(サソリ)」という人物のことを理解していなかった、作者の「心」を知らなかった…人形に込められた想いを理解していなかった事にありました。 
 人形は、ただの道具にあらず…その事に気づいたカンクロウは、人形に「作者の本当の想い(魂)」を吹き込み、次の対戦(穢土転生サソリ戦)では見事に『操演者が作者を超えて』完勝するのです。  “傀儡師として”カンクロウの成長については、以前の雑考(カンクロウの記事、←サソリの記事)で触れているのでここまでとして…今回は“兄として”の成長のほうを見ていきますが…
 
 「完敗」の原因を違う方面から考えると、《カンクロウがたった一人で深追いした》ことも原因として考えられるんです。 
 上司のバキの制止を振り切って、我愛羅を助けるために一人で飛び出そうとしたカンクロウ… 「弟」のことになると熱くなりすぎて、相変わらず短気な…いや「短気」なせいだけじゃなく、これはカンクロウの「里の上役達への不信」のせいでもあったんじゃないかと思うんです。 上役達が「我愛羅を認めていない」とカンクロウは常々感じていたし、我愛羅を守ってやれるのは自分しかいない》という想いがあったんじゃないだろうか。だから…「待ってなんかいられなかった」。
 
 カンクロウの深い愛情は、「何が何でも自分が我愛羅を守る」と一人で背負い込む結果になってしまった。 そして無謀にも たった一人で“暁”を深追いしてしまったんじゃないかと思うんです。 情報もない中での無謀な戦い…そして、見事に完敗…
 
 カンクロウが、その「失敗の原因」に気づいたのは…「助けに来てくれた木ノ葉の忍達(ナルト達)」を見てのことでした。 
 我愛羅に「つながり」を教えてくれたナルト…我愛羅と真剣に向き合ってくれたナルト。そして我愛羅の危機にすぐに駆けつけてくれた他里の忍達は、我愛羅のことを真剣に心配してくれた… そんな彼らの姿を見ながら、カンクロウ我愛羅が言っていた《他者との繋がり》を思い出していきます。
 「兄貴」だけじゃなく、他にも我愛羅を想い信じてくれる人達がいる…それこそ我愛羅が望んだ「繋がりの在り方」なのだと実感しつつも、それでもまだ正直、弟を他者に託すことに「不安」もあったらしい。  あるいは「他者に託す」という事は、自分の無力さ(失敗)を認めてしまう事になる…と思ったからでしょうか。
 
自分だけで我愛羅を守れなかった「口惜しさ」やら「自身への苛立ち」からか、しばらく「自分の手」をイライラしながら見つめていたり…我愛羅の言葉を思い出したり、ナルト達の姿を見つめたり…この間、約4ページにわたって「複雑なカンクロウの心境」が描かれています(29巻)。
 
 我愛羅一人に苦労を背負わせてしまったと思っている分、何としてでも「自分が守らなくては」と考える兄貴が、弟を他者に託す事って…なかなか決断が難しいのかもしれませんねぇ。 本当に任せて大丈夫だろうかという心配もあっただろうし、「長男」としての責任感もあっただろうし… 情けない自分が許せなかっただろうし…
 散々迷いながら「決意」して言った言葉は…
 
「……」
 
 
「弟を頼む」。
 
…「我愛羅を頼む」じゃなくて「弟を頼む」… 砂隠れの忍としてではなく「兄貴として」の言葉でした。
 
 これ、同じ事を言うのでも 「砂隠れの一員として風影を頼む」というのなら、ここまで迷ったりしなかったと思うんですよね… だけどカンクロウは「兄貴として弟を頼んだ」。 弟自身が一番望んでいる「他者との繋がり」を信じてみようと…かなりの勇気を出して言った言葉だったんじゃないかと思うんです。
 だけど、この時点では…カンクロウは「渋々迷いながら」だったんじゃないか…とも思います。まだ、自分の体が思うように動かせなかった…という「仕方ない事情」もありましたから。
 
 そしてこの後…カンクロウは上役との会議中、「我愛羅はまだ里の人達に認められていない」と(いうような内容を)語った上役に激昂してしまい、バキや他の上役に止められ、ようやく「チィ」と手を引っ込めますが… 
 でも、どうなんだろ… カンクロウは、上役が我愛羅が里の人達に認められている事を信じない》ことに腹を立ててたけれど、カンクロウだって我愛羅が里の人達に認められていると信じる事に不安があった》んじゃないのか。 …我愛羅を信じてるのは「自分だけ」と思ってたんじゃないのか。 ナルト達に「我愛羅を託す事」を躊躇したばかりじゃなかったか…。 
 上役が語る「事情」を聞きながら、少しずつカンクロウは冷静になっていきますが…その中でカンクロウは「自分自身の在り方」も考え直したんじゃないか…と思います。 
 
 兄として《本当に弟を信じているからこそ出来る事》とは何なのか… それは、《弟が里の人達、仲間達に認められていることを信じる》こと…(「真実の滝」で、ナルトも似たような事を言ってましたっけ)。 それに気づいたカンクロウは…今度は「行動に出る」。
 体も回復し、再び我愛羅のところへ駆けつけようとするのですが…今度は「テマリが戻ってくるのを待って」一緒に向かうんですね。 それも少しも「焦らず」…余裕の表情で待っているんです。 あの「短気に熱くなりがちだった」カンクロウが……
 それは「ナルト達を信じたから」というよりも、「我愛羅がナルト達に慕われている事を信じたから」なのかもしれません。 
 「我愛羅に不安を抱く」上役に怒る事よりも…まずは自分が真っ先に「我愛羅を信じてやる」事が大切なんだと…ようやくカンクロウは気づいたんじゃないかと思うんです。  他者に託すことは、けして「愚図」でも「腰抜け」でもないんだと… それも弟を理解し、弟を信じ、弟を愛しているからこそできる事なのだと…
 
…そのあとカンクロウが見た光景は、カンクロウが信じた通り、いや想像した以上のものだったと思います。それは…心配して駆けつけた、多くの里の人々に囲まれる「弟の姿」… 3年間の我愛羅の「努力」が「つながり」となって実った…感動的な光景でした。
 
  本来なら風影の「長男」なのだから、風影候補でもあっただろうに…《この里に繋がり、風影として必要とされる存在になりたい》と願う弟の夢を実現するために、自分はとことん黒子に徹して応援する… それがカンクロウが選んだ『長男の生き方』。
「自分が真っ先に弟を守る」だけではなく、「自分が真っ先に弟を信じてやる」…それがカンクロウが選んだ「兄貴」としての生き方…
 
 
(もうカンクロウは、忍としても兄貴としても…「愚図」でも「腰抜け」でもない…)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ☆長駄文、読んでくださって感謝。
 
 
 
☆あわせて、もしよろしければ… 『扉間の次男の生き方』も(過去記事です)
 
 
 
(ナルト好きブログ! 2015/01/18)