ナルト好きブログ!(NARUTO考察・雑考)

NARUTO-ナルト-の考察(伏線、言葉、人物考察などなど!)続行中!

波の国編・ナルトと「再不斬と白」その1・・《なぜ波の国編は成功したのかという話》

  ご無沙汰しております;こちらもついに3回目の緊急事態宣言、なかなか先が見えない忍び耐える日々・・・でも、お互いに頑張りましょう!

 

  さて、最近の漫画は「アニメ化」が鍵になっている気もいたしますが、NARUTOも世界的人気のキッカケはアニメだったのかな・・?  とはいえ、原作そのものが序盤のうちに「ファンをしっかり掴んだ」ってのも、 不動の人気を築いた大きな理由だったんだろうと思います。 

 

 序盤・・・・中でも「波の国エピソード」。 

 

 ナルト達にとって「最初の敵」であった再不斬と白。 熱い忍術バトルと、熱い心の闘い。 ラストに儚く雪が舞うシーンで、涙を流した人は多いのでは・・・?

 これが(当時は)新人の作品かと思うほど緻密で、完成度が高い。 連載漫画はやっぱり つかみが大切だよね・・とつくづく思う(比較する訳じゃないのだが)。

 

 今回は、あらためて「波の国編」の考察(雑考)を3回に分けて書いてみようと思います。

 

 まずは、波の国編はどうして成功を収めたのか。 その「成功のポイント」を考えてみると・・・

 

 

 

・文句なしに戦闘シーンが面白い(絵が上手い)

・少年漫画「王道のツボ」を押さえている

・「NARUTOならではの個性」を際立たさせている

 

 うん・・まぁ「当たり前」っちゃ当たり前な気もしますが、その「当たり前」が当たり前とはいえないほど尋常じゃないレベルで超えているのです。 具体的に例を挙げてみますとね・・

 

  まずは圧巻の《戦闘シーン》。

 

 NARUTOといえば「臨場感あふれるハイレベルで多彩な忍術バトル」なんだけど、実は「波の国編」以前は まだ「忍者ごっこレベル」だったんですね。 せいぜいナルトの変化の術(お色気の術)、多重影分身(ハーレムの術など)、シンプルな手裏剣投げとか、「鈴取り合戦」レベル・・・本格的なバトル漫画というより「笑いあり涙ありのドタバタ忍術ごっこ漫画」だった。

 

 だいたい連載開始して10話ぐらいで、そのマンガの「イメージ」って ある程度出来てくるもんでしょ? 読者の評価も定着してきて、その漫画の未来も見えてくる頃。 

 その点、NARUTOは「共感できる主人公」に可愛い女の子とクールなライバル、カッコいい大人達と魅力的なキャラクターが揃い、さらに時折 誰かが「サラッとカッコいい決め台詞を言う」。 ストーリーも分かりやすく、10話までに十分「手応え」はあったと思われます。  まぁよく言えば「安定」・・・だけど、うっかりすれば「第1次マンネリの波期」。 そろそろ飽きも入ってくる頃です。

 

 そこでNARUTOは このあたりから「賭け」に入っていきます。

 

 それが《定着しつつあったイメージに風を起こし、読者に新鮮な驚きを与える》という「賭け」・・・ここから一気にNARUTO《本格的忍術バトル漫画》という真の姿を見せていくのです。

 

《第11話では「強そうな敵・再不斬」が登場し、そこから12~15話はひたすら怒涛のように「スピード感と迫力あふれる忍術戦」が続く》・・・ええっNARUTOってこういう漫画だったのか!と「新たな魅力」に読者は釘付けになっちゃうんですね。

 

で・・まずは出だしっから「引き付け」の演出がニクいのです。

 

《「霧隠れの術」で姿を消したサイレントキリングの達人・再不斬。ナルト達は卍の陣を組んで「いつどこから襲ってくるかわからない」敵に備える・・・》

 

 霧で何も見えないし、サイレントキリングっていう位だから音も聞こえない。敵は、カカシ先生が写輪眼を見せて「本気」を出すほどの相手・・・一気に緊張感が高まるんです。 でも《すさまじい殺気》の中、そこでカカシがニコッと笑って「オレの仲間は絶対死なせやしなーいよ」なんて笑うんですよね。 上忍ってカッコいい・・と思わずポ~っとして気が緩んだ瞬間に、《ドン》とド真ん中に再不斬が斬り込んでく(思わずギャァアの展開)。

 

 こうやって読者を「緊張感」で引きずり込んでおいて、そのあとは容赦なく畳みかけるように「水分身の術」の応酬、さらに再不斬は首斬り包丁を振り回し、派手な体術・・・ドキドキの連続です。

 

で、その迫力の絵がコレ。

 

 

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 「水分身」の応酬のあと、再不斬の首斬り包丁がうなる(第13話より)

 

 「スピード感と迫力」が伝わってくるでしょ・・? 
 

 それを演出しているのが、上のコマの背景の「シャープでシンプルな描線」

この「描線」なんですが、「ジャンプ流秘伝ガイド岸本斉史(ジャンプ・コミック出版編集部)によれば、「シャープでシンプルな描線」こそ岸本斉史先生の持ち味とのこと。

  

 再不斬の大きく振りかぶった構えと、シンプルでシャープな描線が「スピードと迫力」を伝える。 それがあるから、次のコマの《ブン》が引き立ち、「首斬り包丁の重さ」も凄く伝わってくる・・・

 

 首斬り包丁といえば「大きさ」も目立つけど、何と言っても特徴はその「重さ」。

 

 水月が初めて首斬り包丁を手にした時も、最初のひとことが「重い」だった・・見た目以上に重いんですね。 そんなに重い大刀を振り回すほどのパワー・・・ 

 

 霧隠れの術、水分身の術などの忍術、破壊力満点の刀、鍛え抜かれた体術・・次々繰り出されるあの手この手、「想像、期待をはるかに超える」バトルシーンに、読者は釘付けになってしまう。 マンネリ波打破、成功です〇

 

 さらに大切なポイント、《主人公の際立たせ》もぬかりない。

 

こんなハイレベルの戦闘に「駆け出し忍者」がついていけるハズもないのですが、そこはちゃんと《ナルトらしさ》という唯一無二の存在感で圧倒するのです。  

 それはご存知《諦めないド根性》・・・ 何度蹴とばされても立ち上がり、無理だと言われても諦めずに向かっていく。 

 

大切なナルトの「忍道」を見せつけたのがこの絵です。

 

 

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再不斬に二度蹴飛ばされても、額あてをもって立ち上がる・・(第13話より)

 

 

 二度も蹴飛ばされ、それでもよろめきながら 「諦めずに」ナルトは立ち上がる・・・これ、ものすごく大切な場面だから、コマ数も時間もかなり割いてるんですね。

 

 そして立ち上がるナルトを見る「その場にいる人物達」の表情も描かれてる。 

再不斬、カカシ、サクラ、そしてサスケもそれぞれが「・・・」何かを感じてるのです。 

 

 下のコマを見ると、それまでの《シンプルでシャープな描線》で描かれていた背景とは雰囲気が変わってますよね。 木々の「ふわっ」とした包み込むような曲線で描かれた背景は、それまでのスピーディーな時間の流れと打って変わり、時がゆっくりと流れるのを感じさせる・・

 

 そして、カメラは「ナルトの背後やや下のほう」に置かれ、遠くの再不斬達を見るように描かれている・・・ まるで読者も「ナルトの背後から目撃しているような」絵なんです。 つまり読者もその場に立ち会い、一緒に《ナルトの後姿を見て何かを感じる》ように描かれているんです。 「感じて欲しい」んです。

 

 

 そしてこのあと、立ち上がったナルトは一世一代の「見得」をきる・・ 

 

《お前の手配帳に新しくのせとけ! いずれ木ノ葉隠れの火影になる男》

《 木ノ葉流忍者!うずまきナルトってな!》と・・

 

 一頁を使った絵で、ナルトは額あてをギュっと締めてこう宣言する。

 

 ジャンプ編集長で元NARUTO担当の中野氏によれば「キャラクターが(歌舞伎で言うところの)見得をすること」「そこで何を言わせるかという事に心血を注いでこそ 面白いマンガが出来る」のだそうで、まさにこれが「見得」。見事に決まってます。

 

だけど、この見得が決まったのは「その前のよろめきながら立ち上がる過程」がじっくり描かれたからこそ。 作品的に大切なのは、どっちかというと「こっち(立ち上がる過程)」なんじゃないかと。

それこそが《ナルトの諦めないド根性》であり、ナルトの基本姿勢だからです。

 

 さて・・いよいよここからは「ナルトの作戦」が炸裂していきます。

 

 中でも目をひくのがこのナルトの動き、

 躍動感あふれる見開きを使った「この絵」・・!

  

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風魔手裏剣に変化したナルトが再不斬の背後に《ボン》と現れる(第14話)

 目の前にナルトが《ボン》と現れたような臨場感があるでしょ?

 

 で、これまた《斜め後ろから、見上げるような視点の絵》なんですよね。 

水面ギリギリに置かれたカメラに水しぶきがかかりそうな迫力・・ そしてこれも、読者がナルトの後ろあたりから 「その場を目撃しているような」絵だからこその臨場感なんです。

 

 その後は、カカシが写輪眼の力で再不斬を圧倒して 形勢を逆転。 こうして「第一回戦」は一気に終わるのですが、読者は「次々秘策を繰り出すバトル」と「スピード感と臨場感」に圧倒されNARUTOは凄い忍術漫画だ」とイメージを一新する。  否が応でも「今後も続くであろうバトル」に期待が高まる・・・第一回戦にして《本格的バトルシーンでの惹きつけ》は大成功です。

 

 

  そしてもう1つの「賭け」は、NARUTOならではの個性」をどう打ち出すか、そしてそれを読者にどう受け入れてもらうか。 ナルトの「闘いの流儀」をどう受け入れてもらうかです。

 

 ナルトのバトルスタイル、基本ともいえる「九尾の力」そしてサスケの「写輪眼の力」・・ようするに彼ら二人の「眼と獣」の力は 波の国からすでにその片鱗を見せ始めます。 まぁこれについては問題ないかと思いますが・・ 問題なのは もうひとつのほう、「ナルトの闘いの流儀」。 

 

  のちに「ナルトの不思議な力」とも言われる「誰とでも仲良くなってしまう力」、敵の事さえ理解して心をつないでしまう闘い方・・・ これはかなり個性的です。

 

といいますのも、連載終了後のあるインタビューで、作者はこう話しているんです。

  

《『ペイン編』も やられてやり返すという描き方もできたけど、それじゃ憎しみの連鎖は続く。誰かがそれを断ち切らないといけない。なぜそうなったのかを考え、相手を理解する――そこまで描きたかった。 それを少年誌でやるということは大変でしたし、本当に成り立つか? とすごく悩みもしました》

 

(シネマカフェ、2014年12月インタビューより)

 

 ・・うーん、「賭け」だったんですね。

 

 《なぜそうなったのかを考え相手を理解する――》・・・でもペイン戦どころか、波の国編の「最初の敵・再不斬&白」戦で既にナルトはコレをやってのけているのです。

 

 波の国編ラストで、ナルトは敵である白を想って涙を流し、再不斬の「心」に訴えかける。 そして最後には一緒に涙を流す・・・ 

 これは少年誌としては、かなり異色な結末だったのかもしれません。 「敵を成敗してスッキリおしまい」が多い中で、こういった《ナルトの闘いの流儀》は うっかりすれば読者側にモヤモヤ感を残しかねない。

 

  初代NARUTO担当だった矢作氏は「(岸本氏の)青年誌っぽいセンスが少年誌で受け入れられるかと心配した」そうだが、たしかに「NARUTOは難しい」と言われることも多かったし、「マリオ」のクールさとか「サムライ8八丸伝」の哲学的死生観は 正直なところ 少年ジャンプ向きじゃあなかったような気はした・・;  

 でもその点ね、NARUTO「第1話」はシンプルに《悪い奴(ミズキ)を懲らしめておしまい》だったから、受け入れられやすかったと思う。

 

 しかし、波の国編は「再不斬と白をやっつけておしまい」には ならなかった。

 

 第1話のような終わり方にして「安定の道」を選ぶか・・・それとも「ナルトの流儀」を打ち出して「賭け」に出るか。 で・・NARUTOは後者を選択した

 

 もちろん「賭け」て出るにあたって、緻密な御膳立てをしてるんです。 こういう結末に「唐突感」が出ないように、しっかり布石を打っている・・・そしてその「手」が実に自然で見事なのです。

 

 その為の策の1つは「三部構成」・・・ご承知のように波の国編は大まかに分けて3つに分かれます。  第1回戦(16話まで)と闘いの間(22話まで)と、第2回戦(33話まで)の3つ。 うん・・やっぱり岸本先生は「3」が好きですねぇ(スリーマンセル、三択法、三部構成など)。

 

 「波の国編」の3つは、音楽でいうと交響曲の第一楽章、第二楽章、第三楽章のような感じで、第1部はテンポよく進み、第2部はゆっくりめで叙情的、第3部はフィナーレとして盛り上がる。 その第3部(2回戦)でナルトと敵側の想いが「重なる」わけですが、そこに至るまでの第1部、第2部で 自然とその流れになるように緩急をつけて「段階を踏んで」布石が打たれているんですね。 

 特に第二部では 美しく優しい「白」という「憎めない敵」が登場します。ここで大きく流れが変わる・・・

 

 だけど今回注目したいのは、その前。「第一部(第1回戦)」のほうで打たれた布石なんです。 

 

 第1回戦は《迫力のバトルシーン》や《ナルトの諦めない忍道》に注目しがちですが、それ以上に注目すべきが「再不斬」なんです。 絶妙な「秘められた再不斬の想い」の描写こそ面白い。

 

第1回戦にしっかり仕込まれた、ナルトの闘いの流儀を「成功」へと導く布石・・・

 それについては次回、つぎは《再不斬の心の深淵》に、迫っていくことといたしましょう・・

 

 

☆長駄文、読んでくださって感謝。

 

 

(ナルト好きブログ! 2021/04/27)