さて、139話雑考の続きです… 今回は139話のタイトルのを中心とした雑考を。
139話のタイトルは、「その者の名は…!」。
でもその者って、誰のことなのか明確には分からない。 だけど最も可能性が高いと思うのは‥うちはイタチ。
139話の冒頭、木ノ葉崩しで破壊された里に 異様な姿の二人組が現れる。 鮫みたいな顔した一人が「故郷にはやはり未練がありますか?アナタでも‥」と尋ねると、もう一人がこう答える… 「いいや‥まるで無いよ」と。
こ、これは… うちはイタチ!
これ、イタチの初登場シーンなんですよね。 それまでサスケの話の中とか影絵的に出てくるぐらいで、生のイタチが出てくるのは初めてだった。
とはいえ、この139話の中には「うちはイタチ」の名前は出てこない。 それでも これまでの話や「写輪眼」から分かる‥ だからタイトルが「その者の名は?」と問えば、読者は速攻でこう答えるのだ…「うちはイタチ!!」とね。
実際、このつぎの140話ラストは アスマが「お前は‥!?」といって終わって、さらにその次141話冒頭でアスマが「間違いない‥うちはイタチ」と続けます。 そしてその141話のタイトルが「うちはイタチ‥!!」だった。
139話で「その者の名は‥!!(誰だろう?)」と出して、答えはすぐに出さずじらせておいて‥答え合わせのように141話「うちはイタチ‥!!」で正解を出してみせた。
ここから続く数話はイタチがメインでして、イタチは万華鏡写輪眼瞳術「月読」を披露して 圧倒的な力を見せつけます。 その洗練された戦い方、意味を持ちそうな言葉の数々… 初めて見る「イタチ」に読者は釘付けになる。 とんでもなく強く恐ろしく、美しい忍が現れたと圧倒されていく‥
ま、そんな感じに139話最大のインパクトは「イタチ」だった。 そのために他は霞みがちなんだけども‥ その他の内容も、実は「伏線だらけ」の濃い内容だったのです。
139話はどんな内容だったかというと‥
- 冒頭、イタチ(と思われる忍)ともう一人の不気味な忍が木ノ葉の里にやってくる。
- そのあと三代目の葬儀が始まり、イルカが木ノ葉丸を抱き寄せて幼かった頃を回想する。 孤独だったイルカを励まし抱きしめてくれたのが三代目だった。
- 場面が変わって第三演習場。 カカシが慰霊碑前に佇んでいる。 そこに暗部の卯月夕顔が現れ、会話する(夕顔は、木ノ葉崩しで命を落とした恋人の月光ハヤテに 花を手向けに来たのだ)
- そのカカシを眺めて「フン・・」と呟く自来也。 昔、この第三演習場で綱手・大蛇丸と鈴取り合戦をしたこと、猿飛先生のことを思い出す。
- そして前回取り上げた三代目の葬儀、ナルトの質問に答えるイルカ、そしてカカシ。
- ラストは、歴代の火影岩を背景に駆け出すナルトを温かく見守るイルカ。 イルカの「いつの日か新たな火影となって‥」の言葉で締められる。
このほとんどが《これから先の展開の予告編》みたいなものなんです。
まず冒頭、 “暁”姿の二人が里に現れる・・これは「次の敵・“暁”登場」、暁の話スタートですよね。 この二人は「壊滅状態の木ノ葉の里」を哀れと言って眺めているのだけど、いずれ木ノ葉は、“暁”によって再び壊滅状態に追い込まれることになる‥
そして自来也。 カカシを見ながら「フン…」と呟いて、昔を思い出していく。 まだ幼かった自来也、綱手、大蛇丸…そして猿飛先生。 この第三演習場で「鈴取り合戦」をした懐かしい日を思い出すのです。 で‥自来也の最後のコマは《小さな水溜まりに写る自来也の顔と消えゆく水紋》で終わっています。
これは自来也の最期を予言していたようにも思えるんですよね…
382話、自来也は死に際に《ワシも歴代火影たちの様に死にたかった》とつぶやく。 そして《井の中の蛙 大海で散る‥》と水の中に深く、笑顔で消えていくのだ。
自来也は三代目を想いながら「忍の死に様」について考えていたんじゃないだろうか。 師匠の三代目のように、ワシも「死に様」を飾れるだろうか、これまでの失敗をチャラにできるぐらいの偉業を成して死ねるだろうか…とね。
そしてもう1つ、ラストの「火影岩をバックにしたナルトを《いつの日か新たな火影となって》と見守るイルカ」。
これも第二部ラストの予言っぽい。 NARUTO第二部のエンディング、700話の《ナルトの火影岩の前で、温かく未来(ナルトとボルト)を見つめるイルカ》の絵と重なるんですよね。
これから始まる“暁”やオビトとの闘いの末、最後はこうなるんだよ…《いつの日か新たな火影となって》、とね。 結末まで描かれてるのだ。
さらに「三代目の葬儀」のときに、これからの“暁”やオビトとの闘いでナルトが立ち向かっていく課題に、イルカがヒントを与えてくれていた事については、前回の雑考で述べた通り。
そして残りのもう1つ「カカシと夕顔の会話の部分」ですが、これこそ最大の伏線、予言。
この部分は約1ページと短めだし、読者の多くは会話の内容よりも《美しい卯月夕顔》が気になっちゃったのだ… 暗部というだけでドキドキしちゃうし、仮面を取ったらとびきりの美人だし。 だけどこのやり取りはとってもとっても重要なものだった。
「三代目の葬儀がもう始まってる‥ 急げよ‥」
「カカシ先輩こそオビトさんへですか‥ いつも遅刻の理由考えるぐらいならもっと早く来てあげればいいのに」
「・・・・・」
「・・来てるよ‥朝早く・・」
「・・!」
「・・ただここに来ると・・昔のバカだった自分を
いつまでも いましめたくなる・・」
ここで、いくつかの新事実が発覚するんですよね。 それは《カカシの遅刻の本当の理由はコレだった(慰霊碑に立ち寄っていた)》ということ、そして《カカシの親友(慰霊碑に名を刻まれた英雄)の名前は「オビト」だった》ということ。 さらに《カカシが毎日ここに来ているのは「昔のバカだった自分を戒めるため」だった》ということ‥ ほぼすべてが「新事実」。
まぁどれも「カカシ個人の問題」とも言えるんですがね… しかしこれらは「個人の問題」で済ませられない事ばかりだったのだ。
まず《カカシの遅刻の理由》。 カカシと言えば、当初の印象は「遅刻の常習犯」。 ナルト達に「おっそーーーい!!」と怒られて、その都度「今日は道に迷ってな」とか適当な言い訳をしていたけど、本当の理由はコレだった。
ここで読者は思い出すのです…《第8話で「ここにオレの親友の名も刻まれている」とカカシが言っていたなぁ》って。 正直、第8話に出てきた「慰霊碑の英雄=カカシの死んだ親友」の存在など 忘れている人も多かったと思う。 だからここでリマインドしているんです。 カカシにそういう親友がいたでしょ(思い出しておいてね!)ってね。 そういや、その親友らしき人物の「絵」は第16話(「お前は誰だ…!!」)の扉絵にも出てたけど、それっきりだった。
さらに、そのカカシの親友(慰霊碑に名を刻まれた英雄)の名前は「オビト」ということも判明した。
しかし当時どれほどの読者が「そうだったのか!オビトだったのか!」と反応しただろうか。 ふーーーん(それが何だってばよ?)ぐらいにしか思わなかったんじゃないだろうか。
だって重要人物じゃないし、もう死んでる人だし。 カカシにとっちゃ大切な人だろうけれど、今後ストーリーに関わるわけないと思うから 読者は重要視しない。 せいぜい、慰霊碑に刻まれているその他の名前「蝶野アゲハ 真白ネズミ あじヒラキ 梅星にぎり ミソノあさげ‥」と較べると、オビトって意外と普通だなぁと思うぐらい。 そして「なんでわざわざ名前出したの」と思っちゃう。
いや、だからこそ怪しいんだってばよ! 8話以降「ほとんどの人が忘れていた存在」なのに、ここで名前を出してきた‥ それは出しておく必要があったからだ。
そして139話の中で「初めて明かされた名前」といえば、このオビトだけ。 つまり139話に限って言えば、タイトルその者の名はが指すのはオビトと言えるのだ。 このタイトルはイタチを指し、かつオビトも指していたのだ。
さらに その次のカカシの言葉がすごく引っかかる・・
《ここに来ると・・昔のバカだった自分をいつまでもいましめたくなる》
毎日ここに来て、その都度《昔のバカだった自分をいつまでもいましめる》ってどんだけ・・いったい何があったの?? コレはただ事ではないハズだ。
で‥ 「139話ここまでの情報」だけでも ある程度の想像は出来た。
ナルト達がアカデミーを卒業して第七班に配属されて‥最初にカカシは ここ「第三演習場・慰霊碑の前」で「忍者になる為の鈴取り合戦」を行って、チームワークを試した。 クリア条件は「任務より仲間を選べるか」。
つまりカカシが言うところの「バカだった昔の自分」とは、「仲間より任務を優先してしまった」「チームワークを優先させず個人プレイをしてしまった」ということだ(おそらく)。
・・とまぁ139話の段階でも、ここまでの推測はできるのです。 具体的に何があったかはまだ分からない‥ 事実が詳しく判明するのは、このあとの「カカシ外伝」、さらに425話(ペイン戦でカカシが一度死んだ時)で「カカシの後悔にはリンの死が関わっているらしい」と分かってからです。
さらに、上のカカシの絵を見ていると‥第8話にも似たような絵があった事を思い出す。
「忍者の世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる」
「けどな! 仲間を大切にしない奴は それ以上のクズだ」
同じ第三演習場・慰霊碑の前での絵、同じような横顔(写輪眼側を見せた表情)に、このコマを思い出した読者もいたんじゃないのかな。 カカシが、忍者に合格したナルト達に伝えた「大切な言葉」。 このセリフが「慰霊碑の英雄・オビトの言葉」とは139話時点では分かっていないけど、それでも《カカシはこの言葉を胸に「過去のバカだった自分」をいましめて生きてきたんだろう》と思えるのだ‥‥
そして、これは「カカシ個人の問題」ではなかった。
この先、第四次忍界大戦が始まって 黒幕が「オビトだった」とわかった時。 カカシは驚き、オビトに「なぜ」と問う‥ するとオビトは、
「なぜかとあえて問うなら お前がリンを・・見殺しにしたから・・だろうな」と答えたのだ(600話)。
オビトがこの世界に絶望し、マダラの計画に乗って九尾事件を起こし さらには第四次忍界大戦を起こしたのは・・リンのことが引き金だった。 もちろんリンのことは引き金の一つにすぎないが、「仲間の命より任務や掟」の忍世界の在り方が引き金になったのだ。
カカシが毎朝 慰霊碑の前で《自分をいましめ続ける》その課題が、最終的に戦争の引き金になり、ナルトに問われることになる。
139話では《慰霊碑の英雄》《任務より「仲間を守る」選択が出来るのか》の話がクローズアップされ、さらに自来也の回想部分にも「鈴取り合戦」が出てくることで、ナルト達の《鈴取り合戦》も思い起こされる‥
ところで、ナルト好きブログ!ではオビトとナルトの闘いは いわば《火影をかけた鈴取り合戦》であると考えておりまして・・
ナルトは 慰霊碑の英雄(オビト)の前で鈴取り合戦をして「忍者合格」を言い渡されて、それからナルトの次の目標は「火影」になって・・ そして最後はオビトの試練に勝って、オビトから「火影になれ」と言われた。 つまり、139話から始まる長い長い闘いは、慰霊碑の英雄を試験官とした《火影合格をかけた鈴取り合戦》なんだと‥ 139話はそれを暗示していたように思えるのです。
こうして139話は、これから先の展開の《予言だらけ》ヒントだらけで終わります。 “暁”の登場、慰霊碑の英雄の名前、カカシの遅刻の理由、自来也のこの先、ナルトの未来。 そしてこれから先の課題とその「答え」・・そして「慰霊碑の英雄」を忘れかけていた読者に「第8話」を思い出させてリマインドしておく。 139話には「これから先」が詰まっている。
139話のタイトル《その者の名は‥!!》・・慰霊碑の英雄、カカシの親友‥それは「オビト」だった。
ただし、このときは「これらのこと」が伏線とか重要な事とは思えなかった。 タイトルが意味する「もう1つの名前」だって、重要とは思えなかった‥ これだけ丁寧なヒントが出ていたのにね。
だって慰霊碑の英雄はもう「死んでいる」と思ったから。 過去の人物だから‥話に直接かかわるハズがないと思い込んだのだ。
385話、イタチはこう言っていた‥
《人は誰もが 己の知識や認識に頼り縛られ生きている それを現実という名で呼んでな》
《しかし知識と認識とは曖昧なモノだ その現実は幻かもしれない》
《人は皆 思い込みの中で生きている そうは考えられないか?》
139話、“暁”=オビト編のスタート。 すでに読者は「作者が仕込んだ幻術」に はめられ始めていたのです。
★長駄文読んでくださって感謝。
(ナルト好きブログ! 2023/07/14)
★ちなみに。 タイトルが示す「もう1つの意味」といえば、このほかに16話の「お前は誰だ‥!!」、それに347話の「寄り道‥!!」などもあります。
以下、参考過去記事↓
★慰霊碑の英雄、鈴取り合戦のはなし↓↓