さて、今日は「渦の中のつむじ風」の中から、九尾の九喇嘛のことを。 九喇嘛の「ある言葉」がすごく引っかかりましてね・・
さて、九尾の九喇嘛は、NARUTOP99投票で 世界総合22位だった。 だったんだけども‥原作者の岸本先生は《実は僕個人としては九喇嘛を応援していました》だったそうな。
実際、NARUTO-ナルト-は九喇嘛無しには話が成り立たない「最重要キャラ」なんですよね。 だけどいかんせん、九喇嘛が「ナルトと仲良くなる」のは遅すぎるほど遅かった‥ そのぐらい、九喇嘛の憎しみや不信はガチガチだったってこと。
そして・・今回の外伝に出てくる九喇嘛も、当然ながら
とんでもなく闇、憎しみ、不信のカタマリ。
そりゃそうですよね、マダラに操られて「終末の谷」で戦わされて、挙げ句に柱間に封印されて‥それからは人柱力のミトとクシナの中に閉じ込められきたんだから。
《人間ってのは都合よく尾獣を利用して、その力を使って破壊したり他者を傷つけてばかりいる》‥九喇嘛はそう思っていたはずなんです。 実際、そうだったしね。 だから、今回の九喇嘛は怒って挑発してばっかりで、すごく怖い顔してる・・
九喇嘛は、隙あらばクシナを乗っ取ろうと画策する。 クシナも尾獣化しかかっちゃうことが度々あったんですね。 ナルトと同じようなことがあったんだ。・・だけど。 クシナとナルトじゃ「違う」と思うことがあった。
それが《尾獣化のキッカケ》。
ナルトの場合は「怒り」が引き金だったんですよね。 だけどクシナの場合は違う。 クシナには「怒りや憎しみ、人間不信」があまり無かったんじゃないだろうか。 いつもミナトがそばにいてくれたから‥ ミナトのことを心から信頼していたから。 まさに《その器に九尾より先に愛が入っていた》からじゃないのかな。 だから九喇嘛も「怒りや不信」に乗じて人柱力を乗っ取ることが出来ない。 クシナにはなかなか隙が無い。
九喇嘛がクシナを乗っ取ろうとしたきっかけは、ミナトが《君を――失いたくないんだ》といった時だった。 その言葉と笑顔に、クシナが心をきゅんと掴まれた時だった‥ そのとき九喇嘛は、クシナを脅して煽って揺さぶろうとする‥
《誰も信用するなと言ったはずだ》
《こいつはいずれお前を利用するぞ!》
これは「脅し、揺さぶり」ではあるんだけど、九喇嘛の「本音」でもあると思うんです。 九喇嘛は、人間ってのは「他者を都合よく利用する」「騙してくる、絶対信じてはならない」と思ってた。 優しく甘い言葉には「裏」がある‥ってね。
だから、ミナトの「お前を失いたくないんだ」なんて言葉や、ニコッと笑った優しい笑顔も 九喇嘛にとっちゃ《胡散くさい芝居》《騙し》にしか思えなかったんだと思う。 クシナを揺さぶると同時に、騙そうとしてくる(と思えた)ミナトへの怒りもあったんじゃないだろうか。
だけどクシナはそんな揺さぶりには動じないし、ミナトもクシナから離れず「封印」で九喇嘛に対抗する。 血を流しながらも、クシナから離れない。 クシナを守り抜こうとする‥
そして九喇嘛はミナトにこう言うのですが‥その言葉が少し意外なものだったんです。
『お前ほどの忍が なぜこんな小娘にこだわる⁉』
《なぜ》って言ってる・・九喇嘛が気になったのは、そのポイントだったんかい!ってね。
ミナトが高度な封印術を使ってきたんだから、普通ならそこは「このガキ!何を生意気な!」とか、そんな感じの反応だと思ったんですよね。 だけど九喇嘛が言ったのは《なぜ?》だった。 九喇嘛には《ミナトが身を挺してクシナを守ろうとする「理由」が理解できなかった》んです。
で‥ここまで読んで、すごく気になったことがあったんです。 それは‥
《この頃の九喇嘛と昔のナルトはそっくりだった》ということ。 第1話に出てくるナルトにそっくりなんです。
・・それは、この部分。
第一話、ミズキの攻撃を受けるナルト。 そこでイルカ先生は、身を挺してナルトを守ってくれる。 イルカは血を流しながらナルトの盾になって 守ってくれた‥ イルカは本能的に咄嗟に「ナルトを守ろう」としたのですが、ナルトの反応はこうだった。
「何で‥」
「何で‥」なんです。 先生が身を挺して守ってくれたら、普通なら「イルカ先生っ!!」「先生大丈夫か!?」みたいな反応だと思うんですがね‥ ナルトはすごく戸惑った顔で「何で‥」って‥
ナルトには《イルカが身を挺してナルトを守ろうとする「理由」が理解できなかった》んです。
これは、九喇嘛の《なぜ》に近い。
そのぐらい、当時のナルトは「人間不信、憎しみ」のカタマリだった。 だから、イルカ先生がここまでしてくれるのは「何か事情や特別な理由」があると思っちゃったんですね。 そうじゃなければ、こんな事をしてくれるハズが無いと。
さらにイルカが「そうだよなぁ・・ナルト・・さみしかったんだよなぁ・・苦しかったんだよなぁ・・ごめんなぁ・・ナルト オレがもっとしっかりしてりゃこんな思いさせずにすんだのによ」と言ったら・・ナルトはゾッとしたような顔をして逃げ出しちゃった。 そして、
「ケッ・・やっぱそうだってばよ! ホラな・・イルカ先生も本心ではオレのこと・・認めてねェーんだ」
・・なんて考え始めたのだ。 これ、今回の外伝で九喇嘛が《誰も信用するなと言ったはずだ》《こいつはいずれお前を利用するぞ!》って言ってたのと、考え方が同じなんですよね。
ナルトも、全く他人を信じていなかった。 だからイルカが「守ってくれたこと」とか「優しい言葉をかけてくれた」ことを素直に受け止められず、「裏がある」って疑った。 優しい言動に感動するどころか、逆に「嫌悪感」さえ見せたのだ・・・九喇嘛と全くおんなじ。
だけどナルトの場合、そのあとこっそり物陰に隠れて イルカ先生とミズキの会話を聞いて‥そこでイルカが「あいつは木ノ葉隠れの里の うずまきナルトだ」と言ってくれたのを聞いたから‥あれは本心からの言葉や想いだったんだと素直に理解できたんです。 しかし九喇嘛はそんな簡単にはいかなかった;
このあとミナトは、壮絶な命懸けの(向こう見ずと思うぐらいの)戦い方でクシナと一緒に戦い、クシナから絶対に離れようとしなかった‥《失ってたまるか!》《クシナの中にはいつもボクがいる!!》ってね。
そして本気の螺旋丸と本気の言葉で、正面から九喇嘛に向かってきた。
あれだけ疑い深い九喇嘛も、さすがにさっきの言葉は「本心からの言葉」だったと分かったハズ。 だけど、いやだからこそ‥よけいに《なぜ》なのか分からなくなっちゃったんじゃないだろうか。 なぜ、こんな小娘に‥ってね。
このあと九喇嘛は、九尾事件のときにクシナとミナトの「おたがいへの愛」「子供への愛」を見せつけられることになる。
命を捧げるほどの「愛」・・それは九喇嘛の「なぜ」への答えでもあったんです。 大切だから、大好きだから・・愛しているから。
九喇嘛は、その「答え」をどう受け止めていたのだろうか‥?
さらに十数年後、第四次忍界大戦の時。 ミナトの魂と一緒に「死神のお腹にずーっと封印されていた九喇嘛ののこり半分(陰チャクラ)」も復活します(ナルトと一緒にいる九喇嘛は「陽チャクラ」の部分)。
その陰九喇嘛は、九尾事件以降ずっと時が止まっていたようなもんですからね・・ いわば「九尾事件当時」の状態なんです。 その陰九喇嘛が、復活した戦場で ミナトにこう言ったんです。
「クシナが死んだのは お前のせいではない 息子を人柱力にしたのも悪いことではない・・」 「世界がこうなってしまったのを今まさに・・」「変えようとしとるのがお前の息子だ もうあの時の赤子ではない」tってね(643話)。
「九尾事件当時のドロドロ闇まみれ九喇嘛」のハズなのに、ミナトにこんなことを言ってくれたのだ。
だから・・昔から九喇嘛は「本当は理解していた」んだと思います・・あの日の《なぜ》の答えを。 ただし、それを素直に「受け入れる」のに やたらと長い時間がかかったけどね。 もしかしたら・・
九喇嘛の物語ってのは、この「なぜ」の答えを知る物語だったのかもしれませんね・・
☆長駄文、読んでくださって感謝。
☆ほんとは渦の話やミナトの戦いについて雑考しようと思ってたんだけど、テーマを変えてしまった;それらについては後日また。 もう少し外伝関連の雑考続けます‥
(ナルト好きブログ! 2023/07/20)