NARUTO 584:薬師カブト (その1)
《自分が何者か知りたいのなら・・・さあ・・・私の傍らへ・・・》
今週は興味深い描写もいくつもあったし、ここにきてまた“大蛇丸”の存在感が一段とアップした感があります。
さて、まずは・・・タイトルの「薬師カブト」ですが。
「人名タイトル」ってのは時々出てきますが、大体そういう時は「その人の真実」が語られることが多いような気がします。 だけど、今週の「薬師カブト」はちょっと違う。
「名前」というのは真実を語るものであり、「唯一にして絶対」のモノのハズでした。 だけど「薬師カブト」…これは「偽りの名前」。今回の「薬師カブト」は、カブトが偽りのカブト(薬師カブト)に成りすましていく物語。
名前は真実を語ることもあれば、偽りを語ることもある・・。
・「知りたい」
「アナタ・・・知りたいことがどんどん増えるわね ・・それはいいことよ 人は知りたいという欲望から逃れられない・・・だからアナタはこうしてここへ付いて来た」
・・たしかに、人は「知りたがる」動物だってばよ; ノノウ(マザー)が何故カブトを襲ったのか、なぜカブトを覚えていなかったのか…それを知りたくて大蛇丸のアジトについてきたカブト。
にしても、大蛇丸のアジト立派ですねぇ…大掛かりな装置、大量の資料、揃った実験器具・・探究心の強そうな少年カブトの心を捕えるにはもってこいな施設です。 《ここは君のために用意した医療実験施設》なんて言ってましたが、大蛇丸って そこまでしてでもカブトが欲しかったの?
“研究者”大蛇丸としては、ど~しても優秀な“医療忍者の協力者”が欲しかったということなのかな。 そして自分の協力者となり得る「インテリ素質のある」少年カブトに白羽の矢を立てたのでしょうか。
だけど大蛇丸って…置いてあるメスは汚れが付着したままだったりで、意外とガサツなの?w
33巻で、カブトがメスに付着した血を洗い落しているのを見て「アナタA型だったかしら」・・なんて言ってましたけど、そこは医療忍者と研究者の感覚の違いなのかなぁ(暁アジトにある「トビの手術台」のほうが清潔だったような気がする)。
もっとも、潔癖症カブトに「あまりにも汚いから自分が管理したくなる」衝動を起こさせるための「策略」だったとしたら…それはそれで大したものなんですが。
そして前回、池から「オロチが出てきてコンニチワ」にはビックリでしたけど…なるほど、これは「任務」だったんですね。 《ノノウ(マザー)とカブトを監視し、情報を知りすぎた彼等を相討ちさせ、生き残った方を処理する》ダンゾウからの命令。
う~む・・ということは、九尾事件の時もダンゾウと大蛇丸は「つながってた」という訳ですね(色々と怪しいなぁ)。
だけど大蛇丸を刺客として送り込んだのなら、何もノノウとカブトに『相討ち』なんて残酷な事をさせる必要はないですよね。 いかにも根らしい発想というか、ここまで極端なのはダンゾウのドS趣向としか言いようがない・・というか。 もはや今回の戦争の「真の敵」は、ダンゾウに象徴される「忍世界の闇」なんじゃないかと本当に思えてきます。
・「知りすぎた者」
《ノノウがカブトを認識できなかった理由・・・それは根が「もう1人のカブト」をでっちあげ、長い時間をかけてノノウにはそっちを本物と思い込ませ洗脳し、ホンモノのカブトを「暗殺のターゲット」と思い込ませたから》。
「情報は時として強力な術や武器より強い力を持つことになる・・・」 (大蛇丸)
情報の重要性については今までも度々出て来ましたが、「情報の操作」・・・これは本当に怖いですね。
ここでも再びイタチの言葉…《人は誰もが己の知識や認識に頼り縛られ生きている》 《しかし…その現実は幻かもしれない》…これが心に《ずしん》と響いてきます。
デマを流したり世論を操作したり、誤情報が人の記憶や大切なつながりさえ『上書き』してしまったり…これは“根”の常套手段らしいですが、なんだか幻術「別天神」みたいですね。 純粋な人ほど簡単に洗脳されてしまいそうです。
それに…ノノウやカブトみたいに 何かと重要な秘密を知りすぎてしまう機会も多そうな“医療忍者”。 ダンゾウに消されてきた医療忍者は他にもいたんじゃないだろうか(もしかしたらリンとか・・;)
・作られた新しい自分・・「薬師カブト」
「ボクを・・説明できるものがずっと欲しかった!」
「やっと手に入ったと思ったのに!」
「根のお前らのせいでボクはまた何者か分からなくなった!!」
「―眼鏡はボクとマザーを繋げるものだったのに! もらった名はボクだけのものだったのに!」
「何があってもボクの姿を忘れない親がマザーのハズだったのに!」
「全て違うじゃないか!! なら・・・ボクはいったい―」
「何だ!!?」
まずはカブトの怒りを無抵抗で全て受け止めてから、ズリュっと脱皮してカブトをビックリさせる・・
「キミは自分を説明できるだけの情報がまだ足りないだけ・・ 眼鏡も名も子供であることも 本当の自分を示すものではなかった」
「それでいいじゃない」
「今までのものが納得できないなら・・ 代わりのものを見つけて次々に足していけばいいだけのこと」
《それでいいじゃない》・・・この言葉が何とも巧い、と言いましょうか。…カブトみたいな真面目で完璧主義な子に必要なのは《それでいいじゃない》と受け止めてやることじゃないか?と思うんです。 ず~っと一人で頑張ってきて《やっと手に入ったと思ったのにダメだった》カブトが一番欲しているモノ…それが「もういいんだよ」と受け止めてもらう事なんじゃないだろうか。 (真実の滝で、ナルトが闇ナルトを「もういいんだ・・・」と受け入れたのと似ているというか)。
そしてこの大蛇丸の「受け入れ」は、ナルトの《16年分の怒りのパンチ》を受け止めた四代目、そして「いいえ・・ここに居ていいのよ」と言ったクシナの“無条件の受け入れ”にも似てるなぁと思ったんです。 大蛇丸は見事に両親のような「無条件で受け入れ」をしてやったのかな、と。
そして…受け入れた後は 見事な「洗脳」が始まっていく…
「私も自分が何者なのかを知りたくてね あらゆるものを集めているの」
「少しずつ集めた多くのものから実験と検証を繰り返し・・知識と能力を己に蓄積させていく」
「そしてそこから新しい完璧な自分に向かって・・生まれ変わっていく」
「己を消す根とは違い 己を導き出す組織・里を作る どの国にも属さない音隠れの里」
でもこの言葉、けして勧誘のための出任せという訳でもないと思うんです。 大蛇丸も「自分が何者なのか」探究し続けたかったのだろうし、今までの忍世界の在り方に「インテリならではの」疑問を持っていたのも事実だと思うんです。 以前、カブトが言っていた『ボクはただ大蛇丸様のお考えに共感しただけさ』の「お考え」とは、これらのことだったのかな。
「私と君は今より木ノ葉の根を抜ける そして今より私が君の上司となり兄弟となり親となる 私がダンゾウからアナタを守る・・」
「今日より新たに薬師カブトとして生まれ変わるのよ・・」
大蛇丸は カブトの目の前で「一度死んで」、そして「再生して見せた」…
カブトを受け入れ、そして新たな名前を与えて再生させ、「父と母」両方の(偽りの)愛情をカブトに与える(大蛇丸の中性的な存在感は、確かに「父と母」両方の役割を果たしそうな気はします)。
(この前カブトが「今度からボクが兄として君の側にいよう さあ一緒に」なんてサスケに手を広げてましたけど、あれは…この時大蛇丸に言われたことの再演だったんですね;)
「私は大蛇丸」
「自分が何者か知りたいのなら・・ さあ・・ 私の傍らへ・・」
※すみません、その2へ続けます・・・。
※コメント欄は「その2」に設けさせていただきます、よろしくお願いします。